そこで同社は、付加価値が高くブランド力を持つ第2の商材を育てるべく長崎県対馬の「穴子」に着目。これを自社の流通ルートに乗せるため昨年4月、上対馬に新工場を開設し、「あなご刺し」「あなご開き」といった新商品の販売に乗り出した。
対馬西側は漁場の水深が深く、海流が速いうえに餌にも恵まれているため、この海域で獲れた穴子は、脂が乗って非常に美味しいと言う。すでに地元では「対馬西あなご」という名前でブランド化され、築地市場では極上品として取引されているようだ。
「穴子のシーズンは3月から10月で、対馬だけで年間900トンという日本一の水揚げがあります。原料を確保しないと加工もできませんから、安定して調達できる韓国産も使う予定です。工場には魚の味を落とさない大型のCAS冷凍庫も完備しました。日産1トンで月商4,000万円、年間5億円を目標にしています」と井上幸一社長。
すでに東京の西友と取引が決まり、小田急OXや地場のハローデイではすでに販売中だ。流通量を安定させることは、スーパーにとっても売上予測が経つ。店頭、消費のことまで考えた綿密な営業戦略がうかがえる。
「今のうちに手を打っておかないと、いずれ対馬は漁業で生計を立てられなくなると思います。ちょうど良いタイミングなので、少しでも対馬のためにお手伝いができればということです。目下、どこを母体にするか、第3セクターがベストなのかなど、現地の担当者と事業計画を進めています」(井上社長)。
ライバルができて、お互いが切磋琢磨すれば、地元の水産流通を見直す契機になり、漁業経営の体質強化や安定化にもつながる。
井上社長自身が長年にわたって魚の加工、流通に携わってきただけに、誰よりも漁師の心情や漁業が抱える課題を熟知している。まずは地元が意識を変えないと、何の解決にもならないということだ。
対馬に魚が集まると、それにつられて人が集まり、どんな産業も活気づく。漁師の年収が漁業大国ノルウェー並に高くなれば、次世代にとっても魅力的な職業に映るだろう。
(つづく)
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 幸一
所在地:福岡市南区井尻5-20-29
設 立:1987年7月3日
資本金:5,000万円
TEL:092-593-7662
URL:http://www.jp-seafoods.com/
<PRESIDENT PROFILE>
井上 幸一(いのうえ・こういち)
1948年8月19日生まれ。福岡大学法学部法律学科卒業後、家業の鮮魚小売り(有)天龍に入社。同社の百貨店鮮魚テナントの店長を経て、87年に(株)ジャパンシーフーズを設立。
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