原発の再稼働をめざす九州電力が訴訟で追い詰められた。
住民らが川内原発、玄海原発の操業停止を求めた2つの集団訴訟で、「規制委員会の適合性審査で合格を得てから反論する」などとして逃げ切りを図ったが、それが許されない状況に陥ったからだ。原告側が猛反発し、裁判長も反論を促したため、九電は「原発が安全だ」という積極的な主張を早急に出さざるを得なくなった。
九州電力川内原発1、2号機の再稼働に向けて、原子力規制委員会の新規制基準への適合性審査が大詰めを迎え、規制委員会は延期していた審査書案を16日にまとめる方向だ。安倍内閣と電力会社は再稼働に突き進んでいる。福井地裁が大飯原発3、4号機差し止めを命じた判決、原子力市民委員会が川内原発の再稼働の無期限凍結を求めた見解など、再稼働にストップをかける動きが相次ぐ。九電が裁判で安全性の積極的な主張が出せないなら、再稼働そのものの根拠が崩れる。
玄海原発訴訟では2013年1月の提訴以降、原告側は同年9月までに基本的な主張を終えて、原発の危険性、新規制基準が安全性を保証しないこと、原発の操業による人格権などの侵害を明らかにした。その次は国・九電側の反論の番だった。
九電の番になって7カ月が経つのに、一向に反論が出てこない。九電側は「玄海原発に関する部分は反論し終わったつもり」「玄海原発のどこが危険か、原告が具体的に主張してくれないと反論できない」(3月28日)と言うものだから、波多江裁判長が「新規制基準に基づいて安全だというなら、そういう主張をしてください」「安全性について一通りの主張を出してください」と求め、九電側は「裁判所の言う方向で検討したい」と約束していた。
(つづく)
【山本 弘之】
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