2024年12月23日( 月 )

韓国経済ウォッチ~サムスンペイの好調(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 「サムスンペイ」の一番の特徴といえば、NFC(Near Field Commucation/近距離通信)とMST(Multiple Spanning Tree/磁気カードセキュリティ伝送)の両方をサポートしている点である。アップルはNFCしか対応していないため、この点がまず「サムスンペイ」の大きな差別化のポイントになり得る。
 NFCチップが内蔵されたスマホを、加盟店に設置されたカード読み取り機にタッチするだけで無線で決済が行われる方式は、アップルもサムスンも対応している。ただし、加盟店には現在、NFCチップが内蔵されたスマホに対応できる読み取り機がそれほど普及していないのだ。アメリカでは、加盟店の10%しか、それから韓国では1%の加盟店しか、 NFCチップ対応の読み取り機は普及していない。せっかく決済をしようとしても、対応の読み取り機がない限り、利用ができないのが現状である。アメリカ全国の読み取り機の数は1,200万台なので、新しい読み取り機を導入しようとすると、合計ではかなりの金額になる。各店でも不景気のなかで読み取り機の導入は負担になるため、予想よりNFC対応端末の普及が遅れている。

スマホ決済 イメージ しかし、モバイル決済のスマホ機種が増え、その利便性がユーザーに認知されれば、読み取り機の普及も今後増えていくことは間違いない。MSTに対応しているということは、既存のクレジットカードを決済するときに使われていた読み取り機を、そのまま使うことができるということを意味する。違いがあるとすれば、クレジットカードは読み取り機にスライドさせるが、今回は、クレジットカードはスマホに登録されているため、読み取り機にスマホをタッチするだけで決済ができる。
 この方式の一番のメリットは、お店が新規投資なしに、既存の読み取り機で対応できる点である。韓国だけでも全国に220万台の読み取り機が普及しているが、それを変える費用を計算してみると、4,400億ウォンという金額になるという試算がある。

 「サムスンペイ」は、まず市場でシェアを獲得することで機先を制し、アップルペイ、アンドロイドペイに先行したいという戦略のようだ。しかし、MST方式は過渡的なもので、将来はNFC方式が普及すると専門家は口をそろえる。

 ところが、「サムスンペイ」にも懸念材料がないわけでもない。一般的に磁気方式のクレジットカードは、セキュリティに弱点があると言われている。すなわち、複製しやすいし、信号を横取りされやすい。「サムスンペイ」では、そのセキュリティの弱点を補うために、暗号化された1回だけの情報をやり取りするため安全であると、サムスン関係者は説明した。

 「サムスンペイ」は韓国でのサービス開始に続いて、9月28日には、米国でもサービスを開始した。アメリカでサービスを開始することで、“桧舞台”での本格的な戦いが始まる。「サムスンペイ」が米国でサービスを開始するということは、「アップルペイ」やグーグルの「アンドロイドペイ」と真っ向から勝負することになることを意味する。

 「サムスンペイ」はアメリカと韓国でまずサービスを開始し、その後、中国とヨーロッパにサービスを拡大していく予定であることを明らかにした。

(了)

 
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