子どもの笑顔と発展の熱気~カンボジア視察ツアー(8)~カンボジアで活躍する日本人と孤児院
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昼食をとり、次の目的地、鬼一二三日本語教室を目指す。鬼一二三女史が校長となり、また教師として日本語を教えている。現在の校舎は築12,3年。今も少しずつ改築・増築されており、いつ完成を見るのかは分からないと鬼先生。今年の7月10日で20周年を迎える。シェムリアップは国際観光都市だ。海外からの観光客を安全に、満足のいく案内ができるガイドは、現地では破格の高収入が得られる人気の職業だという。それゆえ、外国語を学びたい生徒が多数いるのである。
鬼先生の元にもカンボジア各地から生徒が訪れている。現在の生徒数は150名。これまでに2,600名の卒業生を輩出した。卒業、といっても、正式に卒業式を経るわけではない、と鬼先生。
「カンボジアでは生徒が突然、教室に来なくなることがよくあります。就職するなどした場合、挨拶もなしに急に来なくなるのです。それが文化の違いですね」
鬼先生はこれまで30名の生徒を日本の大学などに留学させたと胸を張る。国費留学生や授業料免除の生徒を日本で学ばせる機会を設けることができたことは、鬼先生の誇りなのだ。今も、明治大学をはじめいくつかの大学に留学させている。
鬼一二三日本語教室で視察団は模擬授業を生徒とともに体験させていただいた。日本語のスピーチを披露してくれるなど、嬉々として学んでいる姿を見ることができた。知識が足りていない。学びたい。自分の生活をよくしたい。そう言った思いが向学心に直結していると感ぜられた。
だるま愛育園へ向かう。日本人の内田弘慈氏が延長となりつくった孤児院である。戦争で親を失った子供たちの惨状を目にした内田氏がその子たちを守るシェルターをつくった。それがだるま愛育園である。現在は、内田氏とともに盛り上げてきたソリカ女史がご飯をふるまってくれた。とてもおいしい日本食だった。食後は子供たちによる舞踊の披露があった。とても温かいひと時を過ごすことができたが、同時に孤児院という環境を想うと複雑な感情になった。
カンボジアでは2種類の孤児院があるのだという。ひとつは戦争で両親を失った子供たちのためのもの。もうひとつは人身売買から子供たちを守るためのもの。後者は生活苦からやむなく子供を手放す親が多数いるカンボジアで、人道的な観点から子供たちを親元から引き離すのである。最低限の豊かささえ、今のカンボジアには期待できない人々も多くいるのである。熱気にあふれるシェムリアップ、観光客がひきもきらないアンコールワット、中教室を卒業し夢に胸ふくらませる子供たちの笑顔。そのかげには、まだまだ深い闇があると感じた。
今回、3泊5日の旅程でカンボジアに訪れた。同じアジア人として、カンボジアの現状を見ることができたのは大きな収穫だった。活気あふれる都市部と、のんびりとした農村部、まだまだ未発展なインフラ、教育。これからどのような発展を遂げていくのか。戦禍、その遺物である地雷、国難を乗り越えて、今カンボジアは自分の力で立ち上がろうとしているように感じられた。
(了)
【柳 茂嘉】
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