韓国経済ウォッチ~進化を続けているヘルスケア産業(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
人間は誰しも、健康な生活を希望している。とくに今のように人間の寿命が延びた時代には、ただ単に長寿というだけでなく、いかに人生を健やかに過ごすかが大事になる。世界的には、今まで経験したことのないような高齢化が進んでいる。そのため各国の政府も医療界も、その対応に迫られている。
そのようななかで、ヘルスケア産業にも大きな変革の波が押し寄せている。今回は、今、ヘルスケア産業にはどのようなことが起こっているか、それからそのビジネスチャンスをめぐって各企業がどのように動いているかを、取り上げてみたい。現在の医療は、今まで実現できなかった個人個人の遺伝子情報を活用した診断および治療を行っている。遺伝子情報を解析することで、その人が将来かかりやすい疾病の予測までが可能になっている。それだけでなく、今まではそのクスリが自分にとって効果があるかどうかもわからず服用してきたが、これからは、遺伝子解析によって服用前にクスリの効果の有無も判別できるようになる。
それから一番身近なところでは、今や誰もが持つようになったスマホは、単に通話などの手段にとどまらず、携帯医療機器に変身する可能性を秘めている。スマホにセンサーを搭載することによって、各種情報の収集ができるからである。すでにアライブコー(AliveCor)社の製品では、携帯電話のケースのようなものを装着することで、スマホが心電図を測る機器へと変身するものもある。
それだけでなく、これまで私たちがSF映画などで目にしていたようなことが、徐々に現実化されつつある。たとえば、私たちが日常生活のなかで、寝たり食べたり動いたりするたびに生体が発する信号をデジタル機器が測定し、その情報を病院に送ることで、もし患者に異常があった際には、医療機関から患者に連絡が来るようにもなる。さらに、私たちの生体情報が、グーグル・グラスのようなディスプレイに表示されたりもする。
極めつけは、スーパーコンピュータが医者の代わりに、一部の役割を担う時代になるかもしれない。このようにヘルスケアと医療分野では、今、大きな変革が起きている。もっと驚くべきことは、これらの医療とヘルスケアの革新は、製薬会社や医療機器会社、病院が起こしているのではなく、IT企業が中心になってこのような変革を起こしている点である。
IT企業は医療現場で使われる機器だけではなく、家庭でも日々の健康状態を記録するような機器や、クラウドといったITと結びついて機能する機器など、さまざまな切り口から新しい医療機器を生み出そうとしている。医療またはヘルスケア分野に熱い視線を送っているのは、IT企業だけではない。半導体企業も新しい成長分野を模索しているなかで、有望な医療・ヘルスケア分野に注目している。今まで培ってきた半導体技術に、新分野であるバイテテクロノロジーの分野を融合させることによって、革新的なデバイス、またはソリューションを創出できると見ているからである。半導体会社も、半導体の次の成長分野として、ヘルスケア分野に注目しているわけである。
その結果、GEヘルスケアなどの既存の世界的な医療機器メーカーに加えて、IT企業であるアップル、グーグル、さらには半導体企業であるインテル、東芝、サムスン、ロームなどがこの市場に参入し、激しい競争を繰り広げている。
そうしたなかで、サムスングループも医療分野を未来成長分野の1つに指定し、重点育成を行っている。とくにサムスン電子は、ヘルスケア向けの半導体に今後、力を入れていくとしている。
(つづく)
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