自主回収から4年、『茶のしずく』問題を振り返る(1)
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お茶石けん『茶のしずく』の販売開始から6年で、売上高300億円を突破し、急成長を遂げた福岡の通販会社(株)悠香。しかし、石けん利用者に小麦アレルギー症状の発症が相次いだため、2011年5月に自主回収に踏み切った。その後、原告1,330人以上の集団訴訟が起き、裁判は大詰めを迎えている。自主回収から4年が経過した『茶のしずく』問題を裁判や学会の動向、行政の対応などを通して振り返る。
鹿児島地裁の和解案 16人が受け入れ
『茶のしずく』石けん損害賠償請求訴訟は全国26の地裁で行われ、原告は合計すると1,330人を超える。損害賠償請求額も総額で約140億円以上に上る。最も人数が多い東京弁護団は、12年4月の第1次訴訟から第5次訴訟にわたって提訴、原告は82人から167人に増えた。
裁判は東京地裁が最も先行している。東京地裁では、責任論と損害論に分けて18回にわたり審理が進められてきた。双方の主張は出尽くし、7月に裁判所からの和解案が提示される。現在、1人ひとりの症状ごとに和解金額を算出する個別立証の段階に入っている。また鹿児島地裁では、昨秋に審議の途中で裁判所から和解案が提示された。その後、金額などの折衝を経て、4月には原告36人のうち16人が和解案を受け入れた。
鹿児島地裁の和解案は、これまで進めてきた責任論・損害論の審理の結果を反映させた内容でなく、あくまでも「見舞金」の名目で裁判所が早期解決のために提案したものだ。被告3社のうち、原料供給会社の(株)片山化学工業研究所(以下、片山化研)は和解案を受け入れず、販売会社の悠香と製造会社の(株)フェニックスが和解に応じた。和解金額は症状によって1人あたり約120万円~150万円。和解金は悠香が約60%、フェニックスが約40%を負担した。
この結果について鹿児島弁護団は、「和解金額は不十分で、納得した人は1人もいない。ただ、裁判がストレスになっている人もいて、これ以上裁判を続けたくない人は和解に応じた」としている。同裁判の原告1人あたりの請求額は、アナフィラキシーショック症状が出た人が1,500万円、アナフィラキシーショックに至っていない人が1,000万円だった。鹿児島地裁での和解金は請求額の10分の1程度の金額となり、東京弁護団や東京の原告らも強い不満を示している。
東京地裁の和解案を警戒
5月19日に東京地裁で開かれた直近の裁判(第18回口頭弁論)では、悠香側の意見陳述で、悠香の代理人は鹿児島地裁で原告が和解案を受け入れたことを述べ、東京地裁でも同様の和解案に応じないと、金額面で不利になる可能性があるという旨の発言を行ったという。
これに対し、弁護団は「今の発言は訂正すべき。弁護士法に違反するのではないか」と反発し、裁判長も「鹿児島地裁と東京地裁は別」と指摘したという。東京弁護団事務局長の中村弁護士は、取材に対し「(悠香側の発言は)原告が多数参加している法廷で言うべきことではない。7月に裁判所から和解案が出されることが決まっているなかで、利益誘導につながる発言」と話している。
鹿児島地裁での和解案は審議の経過を考慮していない内容だが、東京地裁から7月に出される和解案は、これまでの双方の主張を反映させたものになる見通しだ。この点について悠香側は、「裁判が継続中なので、質問には一切答えられない」としている。
(つづく)
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