2024年11月24日( 日 )

漫画のキャラクターが『おもてなし』!(3)

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ほとんど全ての学生がダブルスクール

 ――前回は、KADOKAWA Contents Academyの設立目的、何を目指しているのかについてお聞きしました。さて、その第1号校舎では、具体的にどのような授業が行われているのですか。

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「角川国際動漫教育」授業風景

 すねや 「角川国際動漫教育」第1号の台湾校では、現在、「マンガコース」、「キャラクターデザインコース」、「カードゲームイラストレイターコース」という3つのコースの授業が行われています。
 「マンガコース」、「キャラクターデザインコース」は2年コース(6カ月コースを4回)で、「カードゲームイラストレイターコース」は1年コース(6カ月コースを2回)になっています。
 6カ月ごとに、新規入学生を募集しています。昨年9月に第1期生、今年3月に第2期生が入学して、現在200名弱の学生が在籍しています。今年、10月からの第3期生を現在募集中です。昨年1期生を募集した際は、募集開始1カ月も経たず、定員に達しました。

 現在授業は平日午後7時10分~午後10時10分、週末は午前9時~午後10時30分に行われています。これは、日本と違う台湾の多くの専門学校の特徴です。台湾では国民の多くが高校、大学まで行くのが普通になっています。そこで、本校のような専門学校は塾のような位置づけになっています。本校に在籍の、社会人を除くほとんどの学生は中学生から大学生で、ダブルスクールとなっています。従って、平日の昼間は通学してくることができないわけです。私は、日本でいくつかの専門学校や京都精華大学などで教えた経験がありますが、日本の多くの学生は、順次1つの学校だけに通います。この点が大きく違います。

教え甲斐も、大きな可能性も感じている

 ――日本でもダブルスクールは聞きますが、あくまでも少数派です。学生は大変と言うか、とても熱心ですね。

 すねや 開講して約8カ月しか経っていませんが、台湾人の学生はとても真面目で熱心であると感じています。現時点で出席率は8割から9割を維持しています。これは、日本の専門学校事情を知る方から見ると、驚異的な数字になります。一般的に日本の専門学校の場合、開講の4月、5月をピークに下がっていく傾向にあります。しかも、日本の専門学校生と違い、台湾の学生はダブルスクールでこの数字を維持しているのです。

 出席率だけではありません。課題はもちろん出来不出来はあるのですが、ほとんどの学生がキチンとやってきます。先生への質問も、日本の専門学校と比べると活発です。「角川国際動漫教育」は台湾で最初にできた本格的な「日本式漫画・アニメの専門学校」なので、学習意欲の高い優秀な生徒が集まったのかも知れませんが・・・。
 出席率や学習意欲の高さは確実に学生のレベル向上に結びついています。「キャラクターデザインコース」などは飛躍的にレベルが上達している学生もおります。絵に関してはごまかしがきかないので一目瞭然なのです。どれだけ手を動かしたか、どれだけ線を引いたかが、そのまま実力に反映してきます。そういう進歩をみると、教え甲斐もあるし、大きな可能性も感じています。今後も、この“温度”で学校運営ができればと思っています。

定期的に、日本から講師が出張してくる

 ――優秀ですね。ところで、教務総監としては、「角川国際動漫教育」台湾校のカリキュラムをどのように考えていらっしゃいますか。

 すねや 今、当校は立ち上げ段階でもあり、基本的なカリキュラムは日本の専門学校と提携し、日本のカリキュラムを現地の実情に合うように調整、提供しています。また、当校の授業はクラス制で台湾人講師と日本人講師両方がコラボレーションして授業をしています。当校はフルデジタルでの制作が中心なのでソフトのオペレーションなどの技術指導は通訳の必要の無い台湾人の先生が主に受け持ち、日本で深く研究されているような漫画制作技術は主に、定期的に日本から出張してくる、日本人講師が担当するような形になっています。
また当校では、近い将来、さきほどご説明申し上げました3つのコースの他に、「声優コース」や「3DCGコース」の立ち上げも計画しています。

キャラクターを表現するドラマが重要

 ――日本独自の漫画制作技術とはどのようなものですか。

 すねや 「角川国際動漫教育」に入学したいということは、日本の漫画制作技術を学びたいということになります。私は、当校の学生に「なぜ、日本の漫画制作技術を学びたいのですか」と質問したことがあります。
そうすると、「台湾の漫画は、日本の漫画に比べると中味が薄い」、「台湾の漫画では泣いたことはない。日本の漫画では何度も泣いた」という答えが返ってきました。この答えを返したのは13歳の女子学生です。

 私は中国語・台湾語が出来るわけではないので漫画の中身については深くはわかりません。しかし、こちらのコミックスをいくつかパラパラみると彼女の言う意味も何となく分かりました。私が見たモノの多くはコメディチックな作品が多くドタバタしているうちに、いつの間にか、幕を閉じるようなモノでした。技術的に言えば、派手なアクションシーンなど日本とほぼ同じレベルで描けているのですが、その根底にあるキャラクター同士のドラマを表現する「間」などがうまく描けていない印象です。
 恐らく、日本の漫画の特徴の1つはそういう部分にあるのではないかと思います。つまり単なる“ストーリー”の出来不出来ではなく “キャラクター”を表現するためのドラマの作り込み、演出としての「間」(コマ割り)の取り方などが研究しつくされているのです。且つそれを何度も推敲して、作品レベルを高く上げられたものが商業作品となっているわけです。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
suneyakazumiすねやかずみ氏(本名:強矢和実)
 台湾角川国際動漫股份有限公司 教務総監・漫画家。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で新人賞を獲りデビュー。『マガジンSPECIAL』(講談社)などにギャグ/ホラー/コメディーなどのジャンルで連載。漫画家ユニットとして集英社『週刊少年ジャンプ』公式WEBサイトでデジタルマンガを連載。携帯コンテンツ初の占いマンガ制作DoCoMo・ソフトバンクの公式占いサイトのプロデュースなどを行う。 
 2008年より(株)漫画家学会の取締役として、漫画家に対して新たなマンガ事業の開拓・提案や紙芝居の事業化を行っている。京都精華大学マンガ学部ストーリーマンガコース非常勤講師、総合学園ヒューマンアカデミー東京校マンガカレッジ専任講師を経て現職。

 
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