軍艦島に新たなストーリーが誕生~映画「進撃の巨人」完成報告会見(後)
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2015年8月1日・9月19日に連続公開される映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」(前編)、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド」(後編)。7月2日に、撮影地となった通称「軍艦島」こと長崎市端島で行われた完成報告会見では、監督や出演者から、「軍艦島」の雰囲気が映画の世界観に通じるといった印象が語られた。
「進撃の巨人」の世界観を体感できる島
「軍艦島」について「ビフテキがカツ丼になった」とたとえた樋口監督。ただの廃墟ではなく、複雑な造りの珍しい建物が廃墟になっているという意味だが、実際に、映画の撮影が行われたのは、住居、学校、病院などの鉄筋コンクリート造の建物が密集している島北東部(一般の立ち入りは不可)。その風景は、都会の街並みが廃墟になったように映る。「時代の最先端をいっていたが、人が突然遠ざかった島。哀しさを感じます」(三浦春馬さん)。外海の高波にさらされ、一部で崩れている「軍艦島」の護岸は大自然の驚異を覚えさせ、その感覚は「進撃の巨人」で壁を破壊する巨人への恐怖にも通じるところがあるように思う。
同作品の軍艦島ロケを撮影陣の滞在地として協力した伊王島では、現在も映画のパネル展や原作をモチーフにした創作料理などで、映画の浸透が図られている(詳細はコチラ)。映画撮影を支援した旧産炭地域の伊王島・高島・池島の振興を目的とするNPO法人長崎アイランドアクト3の久遠龍史理事長は、撮影前の出演者らに端島炭鉱の歴史を教えたという。監督、出演者のコメントには、その炭鉱の島のストーリーが土台となり、映画の世界観につながっている様子もうかがえる。
「軍艦島をきっかけに、長崎、世界遺産のことを多くの方に知っていただきたい」という端島を所有する長崎市の田上富久市長をはじめ、長崎から映画に寄せられる期待は大きい。実際に、昨年5月の撮影ロケ以来、軍艦島上陸見学ツアーに参加する原作ファンも増えているという。実写映画を観ることで「軍艦島」を訪れた際、より深く、原作の世界観を共有することができるようになるかもしれない。樋口監督は長崎の人々の撮影協力への謝意を伝えるとともに、「この映画は長崎で撮影されたんだと他県の人に自慢してください」とのメッセージを送った。
原作者「映画の目的を達成」
とはいえ、実際に観てみないとわからない。とくに、世界中に数多くいる原作ファンにとっては、映画作品の完成度は気になるところ。そこで、完成報告会見のサプライズとして紹介された原作者・諫山創さんのメッセージを紹介する。
人食い巨人の話を19才で考えついた時「物作りのプロの方たちに、この物語を作ってほしい」と思っていました。ですがそんな機会があるはずもなく、自分は下手くそなりに気持ちをぶつけて「進撃の巨人」という漫画を描きました。それから数年が経ち、実写映画化の話をいただいた時、改めて「プロの方たちによる人食い巨人の話を作るチャンスなんじゃないか」と思ったんです。だから僕自身から「原作の枠を取っ払ってほしい」とお願いをして「ビルの上で生活する人類」や「主人公がジャン」などあえて原作とは違う設定を提案しました。それらはさすがに採用されませんでしたが、広い視野で物語を作っていただきたかったのです。
一足先に前後篇、観させていただきました。巨人の恐怖や迫力が凄かったです。それだけではない巨人の愛らしさも出ていて、とても興奮しました!映画化は、原作を再現することではなく、面白い作品を作ることが目的であるべきだと思っています。そしてそれはこの映画で達成されたのではないかと思っています。
原作者も高く評価する映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」シリーズは、樋口監督作品ならではの最新のVFX技術と、着ぐるみや特殊メイクなどによる古き良き特撮技術が見事に融合し、映画館で観るべき、大迫力の作品に仕上がっているという。閉山から40年の時を経て、新たに誕生した「軍艦島」のストーリーによって、端島、長崎でどのような変化が生まれていくのか、夏の映画公開後が楽しみだ。
【山下 康太】
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