2024年11月24日( 日 )

製品で「実用」先端、セミナーで「最」先端!(2)

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公立大学法人名桜大学名誉教授 清水 則之 氏

「トレードショー」と言う表現がズバリ

 ――先生は、「COMPUTEX Taipei」を、技術者としてどうご覧になっていますか。共催のTCA東京事務所、駐日代表の吉村章氏は「“最”先端ではなく、あくまでも、“実用”先端の国際見本市です」と語っています。「実用」先端とは何ですか。

kaijo 清水 まず「COMPUTEX Taipei」とは何かと言いますと、ずばり「トレードショー」と言う言葉が当てはまります。私がこの国際見本市に行き始めたころは、日本ではモーターショーなど、国際見本市、国際博覧会が全盛の時代でした。各社、各ブースが大掛かりな仕掛け、派手さを競い合い、コンパニオンも大量に導入していました。

 それに比べると「COMPUTEX Taipei」の場合は、派手さはまったくなく、もちろん大企業の出展もありましたが、多くは自分の小さな工場で作った製品を会場に持ち込んでいるような感じでした。その代わり、いつブースに行っても出展者、技術者は喜んで応対をしてくれました。昼食もブース内で弁当を食べるなどのケースが多く、寸暇を惜しんで話を聞いてくれ、ビジネスに関する具体的な話ができました。困ったことと言えば、私は台湾語ができず、相手は英語ができないので、直接的なコミュニケーションが取れなかったことぐらいです。友人が通訳してくれたので、支障は生じませんでしたが・・・。今日でも、基本的には、このスタイルは継承していると思います。

 現在、私は技術者、そして日台間の企業同士を結ぶコンサルタントという2つの立場で参加しています。その上で、私は基本的に「COMPUTEX Taipei」について3つの見方をしています。

「最」先端情報を得る目的で参加する

 1つ目ですが、「COMPUTEX Taipei」で「最」先端情報を得るという目的です。これは意外に思われるかも知れません。「COMPUTEX Taipei」の期間中、約100を超えるセミナーや講演会が、台北国際会議センターや南港展覧館、世界貿易センターなどで開催されます。出席者も総数で10,000人を超えます。ここでは、台湾国内の大手企業は勿論ですが、Intel、Bosch、Ford、SAP、IBM、SanDiskなど欧米企業の技術幹部、経営幹部の話が聞けます。
 これを聞くことによって、それらの企業が今何を考えているのか、これから何をしようとしているのかを知ることができます。メーカーにとってもここで、新しい情報を流せば、プレスメンバーが世界中から集まっているので、効率よく多くの方々に知ってもらうことができるわけです。私は一時、「COMPUTEX Taipei」をこのセミナーや講演会を中心に利用していました。

「実用」先端情報を得る目的で参加する

 2つ目は、TCA東京事務所、駐日代表の吉村章氏の言われているように、製品を通して「実用」先端情報を得る目的です。これは実は意外と理にかなっているのです。例えば、私の専門とするネットワーク関連もそうですが、技術はすでにかなり進んでいます。そこでは、さらに新しい技術を追い求めることも重要ですが、むしろ、ビジネス的にはその応用を考える方が効率よく商売をすることができます。つまり、既存の技術のままで、デザインが新しくなり、使う人に便利になっていく、「痒い所に手が届く」製品が今求められています。

 実はアメリカの大企業もこの傾向は認識しています。しかし、大きな金にはならないので、積極的にドライブをかけることができないのです。その点では、この「COMPUTEX Taipei」は充分に真価を発揮することができます。IntelやMicrosoftなどPCシーンのスタープレイヤーと台湾OEM企業間の温度差や距離感を測ることができます。

世界の技術者、プレスと意見交換する

 3つ目の目的ですが、「COMPUTEX Taipei」は私にとっては、年に1回、世界中の技術者、プレスメンバーと会う貴重な場となっています。20回も行っていると、プレスルームなどで日本からの記者はもちろん、外国からの記者とも友達になることができます。その彼らと、年に1回、直接顔を合せて意見の交換ができるのです。

台北駅から桃園空港まで鉄道で直結する

 日本からわずか3時間、そこに世界中から経営幹部、そして多くの技術者がやってきます。とくに日本からは、私が行き始めたころに比べると格段と便利になりました。「羽田空港」から台北市内の「松山空港」ルートができましたので、メイン会場の台北世界貿易センター(TWTC)までは地下鉄(MRT)で30 分かからず、タクシーなら15分位です。
 北海道や沖縄、九州など地方の人にとっては、東京の国際見本市に参加するよりも旅費、食事代などの総額で格安ではないかと思います。さらに今年末には新しい鉄道(桃園捷運MRT)が開通し、台北駅から桃園空港まで直接結ばれる予定です。また数年前から、海外からの来場者の入場バッジには、台北市の協力により市内の地下鉄(MRT)が乗り放題になるICチップが組み込まれています。

(つづく)
【金木 亮憲】


<プロフィール>
simizu_pr清水 則之(しみず のりゆき)
 公立大学法人名桜大学名誉教授、エドノール・インスティチュート代表。早稲田大学理工学部卒業後、1971年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。IBMシステムセンター、IBM東京基礎研究所、IBMヨーロッパネットワーク研究所(ハイデルベルグ)、IBMパロアルト研究所(シリコンバレー)に勤務。在社時代は主に汎用コンピュータ導入前テスト、ネットワークプロトコルの研究、金融系ネットワークシステムの構築などに従事。2003年から2011年まで名桜大学教授・国際学群長。研究分野はネットワークプロトコル、ディスタンスラーニング、医療情報学。情報処理学会シニア会員。
 著者・訳書として、『グループウェア』、『インターネット電話ツールキット』など多数。

 
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