製品で「実用」先端、セミナーで「最」先端!(3)
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公立大学法人名桜大学名誉教授 清水 則之 氏
今年は例年より少し低調だったと感じている
――今回の「COMPUTEX Taipei 2015」に対して、どのような感想をお持ちですか。
清水 今年は一部メディアでも報じられていますが、少し低調だったと感じています。このことは、開始前から言われていました。参加者は昨年同様13万人で、外国からのバイヤーは3万8,550人で横ばいです。しかし、私が申し上げたいのはその内容です。
今までは、もっと華やかで活気がありました。出展の数、それぞれのブースの規模、装飾などにそれが表われていました。今年は、大きな会社の出展が減り、小さなブースが増え、全体的に大人しくなってきたように感じました。PCシーンのスタープレイヤーである、IntelやMicrosoftなども、注目に値する発表は行っていません。これは、私だけの印象ではなく、現地のコンサルタントも同じような感想を持っています。欧米大企業が費用対効果の点で、少し様子見をし始めたという声も聞きます。
インテル、マイクロソフトの個別プレス説明会
今年は、例年あったIntel、MicrosoftやAMDなどのPCシーンを代表する企業が自社の新製品が陳列された別会場で行う個別プレス説明会もありませんでした。これは、夕方5時頃から、プレス関係者などを呼んで、新製品の説明をし、写真を撮らせ、ワイン片手に、昼間のブースとはまた一味違うかたちで応対をしてくれるものです。ここでは、ゆっくりと技術的な質問にも答えてくれていました。
恒例「バイヤーズナイト」もありませんでした
余談になりますが、私が最高に残念だったのは、毎年楽しみにしていた「バイヤーズナイト」がなかったことです。これは初日の夜に、台北国際会議センター(TICC)や南港展覧館のホールなどで行われるいわば外国からのバイヤーに対する歓迎会“お祭り”のようなものです。豪華な食事、飲み物が用意され、バンドが入り、立食なので、自由に世界中からやってきた技術者やプレス関係者と情報の交換ができました。私は「バイヤーズナイト」の場で多くの知己を得ています。その彼らと1年に1回ですが、またその同じ場で、旧交を温めることができる貴重な場だったのです。
――たしかに、いくつかの新聞やメディアにも、今年の「COMPUTEX Taipei 2015」の低調ぶりが報じられています。「COMPUTEX Taipei」そのものの価値が下がってきているということですか。
「COMPUTEX Taipei」の歴史はPCの歴史
清水 私は価値が下がってきているとは思いません。ただ、35年間続いてきましたので、いろいろな点で、その魅力や、費用対効果について、考え直す時期が来ているのではないかと思います。同じように、ラスベガスで、世界のPCシーンを牽引してきた「COMDEX」は約12年前に急に幕を閉じ、今新たなかたちで展開を模索し始めています。
35年間続いている「COMPUTEX Taipei」の歴史は、PCの歴史とも言えます。私が参加をし始めたここ20年間を見ても、いろいろと変遷してきています。私が初めて「COMPUTEX Taipei」に足を踏み入れた頃は、デスクトップPCに関するマザーボードと筐体の製品展示がほとんどでした。次には、CPUやメインメモリが、そしてI/O関連製品が出てきました。そのうちに、ノートPCが普及することになり、その関連製品が並びました。少し前は、USBメモリーに関連する製品、同じ機能でもデザインに優れたものなどが出てきていました。ごく最近は、デジタルカメラ・ICレコーダー・多機能の携帯電話・携帯ゲーム機などのガジェット関連製品が多く出ています。
「素晴らしい製品」と言える機能美のものから、あまりにも「奇抜で唖然としてしまう製品」まで一緒に並んでいるのが、「COMPUTEX Taipei」の面白いところです。
数年前は「WiMAX Bus」を走らせました
過去には、私の専門であるネットワーク関連製品で1つの会場(ホール3)などが埋まったこともあります。また一時は、会場のコーナーの一角をTVカメラ関連製品が占めることもありました。数年前、高速・大容量のモバイルブロードバンドであるWiMAXはまだ規格化されていませんでした。しかし、台湾ではすでに開発が進んでいたのです。
「COMPUTEX Taipei」では、期間中にWiMAXを体験できる「WiMAX Bus」を走らせました。私も楽しく体験させてもらいました。日本からは沖縄県庁、沖縄企業などが出展
私は先ほど、今年は例年より少し低調だったと感じていると申し上げました。しかし、一方で日本の中小企業に関して言えば、「今こそ出展のチャンス」とも思っています。今回、日本からは沖縄県庁や沖縄企業などが出展しています。この出展には、名桜大学在職時代から大きく関わっており、3年前から出展し始めています。私は、彼らには「今こそチャンス、今がチャンス」と伝えています。
それは、入場者が減っているわけではありませんし、そのなかでバイヤーの数は若干ですが増えています。日本の地方の中小企業が自分の企業を世界中にアピールするチャンスなのです。日本と比べると、出展料が格安ですし、交通費、滞在費を含めても東京に出展するよりも経済効率は高いと思うからです。(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
清水 則之(しみず のりゆき)
公立大学法人名桜大学名誉教授、エドノール・インスティチュート代表。早稲田大学理工学部卒業後、1971年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。IBMシステムセンター、IBM東京基礎研究所、IBMヨーロッパネットワーク研究所(ハイデルベルグ)、IBMパロアルト研究所(シリコンバレー)に勤務。在社時代は主に汎用コンピュータ導入前テスト、ネットワークプロトコルの研究、金融系ネットワークシステムの構築などに従事。2003年から2011年まで名桜大学教授・国際学群長。研究分野はネットワークプロトコル、ディスタンスラーニング、医療情報学。情報処理学会シニア会員。
著者・訳書として、『グループウェア』、『インターネット電話ツールキット』など多数。関連キーワード
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