ギリシャの債務不履行、世界経済の行方は?(後)~韓国経済ウォッチ番外編
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
ギリシャのEU(欧州連合)での経済の比重は、3%に過ぎない。ギリシャの総負債額は約3,200億ユーロで、GDPの177%に達している。
それでは、IMF(国際通貨基金)が巨額の資金を注ぎ込んだにも関わらず、なぜギリシャの債務問題は改善しないのか。まず、ギリシャは、公務員や教師、警察のような既得権層と、それ以外の階層との格差が大きい。既得権層は引退しても現役時代の8割の年金をもらえるほど優遇されているが、それ以外の階層の生活は大変である。
それから、ギリシャには観光以外に産業と呼べるような産業基盤もないため、雇用創出も起こりにくい。今、ギリシャの若者の失業率は58.3%で、そのような現実を如実に現している。
さらに、政治の腐敗が蔓延していて、一部の階層だけが潤っている。これでは、国の財政危機から脱出できないのは当然の結果かもしれない。もう1つ、ギリシャの債務額は返済するには大きすぎる。この債務問題が発生した際に、債権者に債務の減免などを要請できたならば、事態は改善したかもしれない。
しかし、世界金融危機の影響をもろに受けていたヨーロッパの銀行は、そのような体力がなかった。もともと弱まっていただけに、もし銀行にギリシャの債務が追加されると、銀行が持たなくなる。
それで債務の軽減ができず、銀行を救済するために、EU、IMF、ECB(欧州銀行)などの公的機関がギリシャに資金を投入することになる。すなわち、公的機関から注入された資金はギリシャに残らず、債権銀行に流れてしまったので、危機は何も解決せず、このような債務問題が続いているわけである。それに、IMFなどの公的機関はギリシャに緊縮財政などの厳しい要求をしているが、事態は好転するどころか、ますます国民の生活は疲弊してきている。さらなる年金のカット、公務員のリストラ、税金の見直しなどの緊縮政策に、ギリシャ国民は疲労を感じ、反発している。
そのような雰囲気のなかで、緊縮政策に反対を唱えるチプラス政権が今年の1月に誕生することになる。チプラス政権は「借りた資金は返すことが当たり前」という認識よりも、「多額の資金を貸し込むことによって地獄のような状況になった」という認識に立っている。そのような認識はEUとの対立をもたらし、協議は平行線をたどるようになる。今の不安定な状況がまさに、危機の再燃を招いている。ギリシャのEUの離脱は、欧州連合の求心力を弱めるきっかけになりかねない。ヨーロッパに金融危機が起これば、世界経済はリーマン・ショックのような悪夢をもう一度経験することになりかねない。そのような事態を防ぐために、EUを始め、IMFも最後の最後まで粘っているようだ。
(了)
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