「不招請勧誘」をめぐる読売新聞vs消費者庁(後)~笑った奴は誰だ
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事態は、これで済まなかった。
7月4日、自民党本部で開かれた内閣部会・消費者委員会の合同部会。マスコミをシャットアウトした会議室には、読売新聞出身の丹羽雄哉氏を始め、山本一太、太田房江らお歴々が集まった。そこに招かれたのが、読売の山口寿一氏と永原伸氏だった。
そこで永原氏は、録画された専門調査会の模様を再現して、「山口の発言中、笑われました」「山口が『笑わないでください』と二度注意喚起したのに……」などと自民党の議員たちに告げ口した。横に座る山口氏は憮然とした様子だった。
すると自民党の議員のなかから、「笑ったのは誰だ!」という声があがった。内閣府消費者委員会の黒木理恵事務局長がすっかり困惑した様子でいる。自民党の有力議員がさらに追い打ちをかける。「つっぷして笑っているのは誰だ? わかるだろう!」。ついに黒木氏は屈服し、「村千鶴子委員長代理(東京経済大教授)と河野康子委員(一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長)です」と“自白”した。
自民党議員は相次いで読売に加勢し、「こんな笑った人が委員である委員会で、まともなものができるわけがない。やり直しだ!」「専門委員会の在り方に問題がある。それなのに法改正なんてありえない!」などと大声をあげる。
大阪府知事だった太田房江議員がマイクを握ってこう一喝した。「委員の人たちは全員、消費者団体の代表ばかりで産業界の出身者が入っていない。産業界の代表者を入れるべきだ」。
会議室に満場の拍手が沸き起こる。中川雅治参院議員が「消費者庁も消費者側に一方的につくのは危険である」と同調すると、議員たちは次々に賛同、もはや消費者庁は万事休すであった。消費者庁は8月にも専門調査会の中間とりまとめを設けたうえで、法改正作業に入る段取りだったが、もはやそんな目論見は絶望的だろう。8月末に任期が切れる内閣府消費者委員会と専門調査会の委員は、消費者団体寄りの委員を中心に大幅に顔ぶれが変わるのは必至の情勢。読売の山口氏を笑った委員は、真っ先に再任されないだろう。「9月に新しい委員のもとで、新聞だけは適用除外にする方向で収束を図る以外に方法はないだろう」と、消費者庁の幹部は悔しそうに語った。
新聞業界、とりわけ自民党・安倍政権とツーカーの読売は、もはや「聖域」である。
朝日新聞社が昨年、自滅した後、業界の覇者となった読売は、今や向かうところ敵なし。その新盟主の山口氏は、やがて尊師ナベツネのように、日本の政財官界に君臨していくことになるだろう。少なくとも、“デビュー戦”は圧勝であった。(了)
【広田 三郎】法人名
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