韓国経済ウォッチ~増える懸念材料(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
雇用市場にも寒波
韓国統計庁の資料によると、6月の就業者数は前年同期対比32万9,000名が増えたことが明らかになった。しかし、就業者の中で1週間に1時間も働いていない一時休職者数は先月36万9,000名にもなっている。ところが、この数字は1983年から統計を取って以来歴代最多と言われている。このような結果になったのは、6月に感染の拡大が続いていたMERS(中東呼吸器症候群)などの影響によるもので、今後雇用市場に寒波が吹きつけるのではないかと韓国政府では懸念している。
統計庁が10日に発表した雇用動向の資料では、6月の就業者数は、2,620万5,000名で、
14年6月に比べて32万9,000名が増加している。しかし、5月の就業者数の増加は37万9,000名であったので、増加幅は減少したことになる。
この原因としては、6月に中東呼吸器症候群の感染が韓国で拡大することによって、不安心理が広がったことをあげている。感染の心配から外出を自制していたことが、流通、エンタテインメント、レストランなどの各方面にマイナス要因になり、売上の減少と雇用の減少として現れている。もう一つの特徴として、今回の感染拡大は正規職には雇用の影響が少なかったが、パート、アルバイトなどの臨時職には大きな打撃になったことだ。
正規職の増加幅はあまり変わらない反面、臨時職の場合、5月の増加数は13万6,000名であったのに、6月の増加数は4万7,000名で、9万名近く減少している。家計と企業の負債額1300兆ウォンを突破
家計と企業の負債額の合計が1,300兆ウォンを上回ったことが明らかになった。低金利時代の到来とともに、負債が膨張しつづけ、韓国政府は神経を尖らしている。
韓国銀行の最近の発表によると、銀行からの貸付金の総額は1,302兆4,000億ウォンで、この内家計への貸付金は、約600兆ウォンで、企業への貸付金は、約700兆ウォンであることが判明した。
最近家計及び企業への貸付金は、毎月10兆ウォンくらい急ピッチで増加している。
韓国銀行が政策金利を引き下げて以来、1年間で100兆ウォン以上の負債の増加があった。
低金利時代の到来と不動産の規制緩和によって家計の負債は増加し続けているし、技術金融という新しい制度が導入されたことで、中小企業を中心に企業負債も増加しつつある。
政府では、このような負債の急激な増加に憂慮していて、負債の増加をコントロールする方法を模索し始めている。ただ、政府は今の負債水準はまだ危険領域に入っているわけではないので、負債の総額を減らす方法よりは、リスクを減らす方法で対応策を検討したいと言っている。
政府ではその一環として、債務者の返済能力をもっと厳しくチェックするなど、貸付をする際に審査基準を強化する予定である。それから、ノンバンク金融機関にはまだLTV(物件の価値に対する負債の割合)の基準が導入されていないが、今後リスク管理のため、ノンバンク金融機関にもLTVの導入を義務つけようとしている。
それに、利子と元本を同時に返済していく債務者の比率を上げていく努力をして、金融機関のリスクをヘッジする対策を講じているようだ。(つづく)
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