2024年11月23日( 土 )

韓国経済ウォッチ~増える懸念材料(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

D-RAM市場に激震

korea1 韓国企業の独壇場であったD-RAM市場に中国企業の参入が相次いでいる。中国企業はまだ韓国企業が脅威を感じるほどの競争相手にはなっていないが、近い将来どのようなことが起こるかは誰も予断できない。しかし、中国政府の積極的な支援策の発表などで世界1、2位のサムスン電子、SK Hynixすらも緊張を募らせている。

 7月13日にウォールストリートジャーナルは、中国の国営企業である清華紫光集団(チンファ・ユニグループ。以下、清華ユニグループ)が米国のD-RAMメーカーであるマイクロンの買収を検討していることを明らかにした。ウォールストリートジャーナルによると、清華ユニグループは買収価格として一株当たり21ドル、合計金額230億ドルを提示したと伝えている。
 半導体チップのデザイン設計を手がけている清華ユニグループは、中国の国立大学である清華大学が設立した技術持ち株会社である清華ホールディングの子会社である。清華ユニグループより先に、先月中国最大のディスプレイのメーカーであるBOE社もすでにD-RAM市場への参入を表明している。

 中国企業が買収しようとしているマイクロン社は、現在世界3位のD-RAMメーカーである。去年の売上高は、114億ドルで、25%前後の市場シェアを持っている会社だ。もしマイクロンが確実に中国企業に買収されることになると、D-RAM市場に地殻変動が起こるだろうと専門家は分析している。
 中国は世界最大の半導体輸入国で、年間2,000億ドルの半導体を輸入しているだけに、半導体の内製化に対する中国政府の意欲は並大抵ではない。1,200億人民元の資金を用意するなど、半導体で競争力を確保するための動きは加速している。
 中国はすでにディスプレイ分野で日本と韓国企業のキャッチアップに成功し、脅威になりつつあるので、半導体でもまた同じような結果を中国政府は目指しているだろう。
 何よりも、中国は自国市場の強みを活かして、品質が少し落ちても自国製品の採用を優先させた場合、韓国企業にはかなりの影響が出てくることは必至だ。

 中国の野心はD-RAMだけにとどまっていない。非メモリ分野であるシステム半導体分野はいち早く1990年代から企業の育成をスタートしている。韓国の場合、非メモリ分野で活躍する企業は、売上規模において1,000億ウォンを上回る企業は少ないが、中国の場合には、売上1兆ウォンを上回る企業は多数あるほどだ。
 その中の1つであるスプレッドトラムという会社は、今回マイクロンの買収を進めている清華ユニグループの子会社である。
 中国政府はシステム半導体の技術力を早期に確保するため、インテル、クァルコムなどと技術協力も活発に行なっている。インテルは去年清華ユニグループの株式を20%持つことになったし、クァルコムは中国企業であるSMIC、ファーウェイ社との合弁会社の設立を予定している。
 もちろん、サムスンの関係者は、プロセス技術で中国より2、3世代は進んでいるので、それほど簡単にキャッチアップはされないだろうと言っているが、中国企業の参入は市場に大きな激震が走ることになるだろう。

(了)

 
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