違憲状態国会議員が安保法をつくる狂気(前)
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『一人一票上告理由書』(升永英俊著、日本評論社)
「この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(憲法98条1項)。
最高裁がいったん違憲状態と判断した国政選挙が無効なのは、小学生でもわかる理屈だ。しかし、違憲状態なので無効になるはずなのに有効だと息を吹き返す理屈(詭弁)を理解するのは容易ではない。
今、最高裁で現実に争われている、2014年衆院選挙の投票価値が憲法の保障する人口比例選挙(一人一票選挙)に違反するとして選挙無効を求めた裁判の原告側上告理由書が1冊の本となって出版され、誰もが手にして目を通すことができるようになった。
この上告理由書と、同著の「はしがき」は、「一人一票」の核心を指摘しただけでなく、日本の立憲主義、民主主義の核心、そして現在進行形の安保関連法案をめぐる核心をえぐっている。最高裁判事は「憲法を規範だ」と思っていない
書き出しから、衝撃である。憲法は規範(=守るべきルール)だ、と同著は指摘する。
国政選挙は、「国務に関するその他の行為」であり、冒頭の98条1項によれば、憲法に反する選挙は無効だ。
最高裁の最近流行の言い方である「憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所」が、衆参両院選挙に関し「違憲状態」と判断しているのであるから、疑う余地がない。
ところが、最高裁大法廷判決は、「憲法の投票価値の平等の要求に反している状態であるが、有効である」と言うのである。私が一人一票の裁判取材に関わったこの約3年間抱き続けた疑問が、この本を読んで氷解した。
著者の升永英俊弁護士は「(最高裁判事が)『憲法98条1項の定めは、規範(=守るべきルール)ではない』と見ていると、解さざるを得ない」と指摘する。
だから、最高裁判事は違憲状態と言っておきながら有効だとして、何の矛盾も感じない。最高裁も内閣総理大臣も、憲法を規範ではなく、「聖徳太子の17条の憲法」と同じ道徳律だと思っているのでは、立憲主義を否定するわけである。(つづく)
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