新たなステージ迎えた再エネの未来(4)
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2030年、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が掲げる、太陽光発電だけで100GW超、5,700万世帯分の電気がまかなえる時代は来るのか。原発39基分の電気が太陽光だけで生み出せるようになれば、日本のエネルギー自給率も大幅に上がり、海外に依存しない国産電力ができるかもしれない。しかし、太陽光のみならず再生可能エネルギーの普及が進む一方で、ハードルはまだまだある。本シリーズでは新たなステージを迎えた再生可能エネルギーの未来について、現在のトレンドから読み解いていきたい。
土地が無いなら別の空間を活かす
太陽光発電は成熟産業へのステージに立ったが、同時に日本国内では太陽光発電設備を設置しやすい土地が減ってきたという課題がある。そのために、傾斜地用架台や両面ガラスパネルなど、厳しい条件でも設置できるというのが売り文句の1つになった。
とはいえ、それだけではまだまだ伸びていく市場の需要を吸収できない。工場や商業施設の屋根なども空間は限られている。そのため、新たな空間を活かした太陽光発電がすでに始まっている。
その1つが営農型ソーラーだ。農地で太陽光発電し、売電収入によって農家の収入を支え、日本の農業を維持していくというのがもともとの出発点。農地の上空にパネルを設置するため、わざわざ別に土地を用意しなくてもいいという大きな利点がある。
これまでにも休耕田や耕作放棄地を活かした太陽光発電所の建設はあった。その売り文句は「20年後に太陽光発電設備をとりはずしても、また農地に戻せるような造成にします」だった。これは「先祖代々の土地を手放したくない。でも農業は続けられない」という高齢の農家に受け入れられた。
だが、それだけでは農業振興につながらない。とはいえ、若手の農家は農業収入だけでは生活できず、別の事業をしながらの兼業農家も多い。埼玉県のある農家は「100年以上受け継がれた農地だから、自分の代では終わらせたくない」という思いから、営農型ソーラーの導入を決めたという。
法律的に農地のままでは太陽光発電設備を設置できないため、「農地一時転用申請」という手続きが必要。だが、農業委員会に農業の継続可能性を証明する必要があるなど、日本ではまだハードルが高い。営農型ソーラーを展開する丸文(東京都)では、こうした申請を代行も含め、設備導入をワンパッケージで販売しており、農家からの注目度が高い。一方で、水上で発電をしようという「水上式太陽光発電」の動きも最近出てきた。すでに中国や台湾では魚の養殖場とセットで設置するケースも増えているが、日本では水面活用はこれまでほとんど注目されてこなかった。
水上ならパネルが冷却されるため、発電効率が落ちにくいというメリットがある。たとえば、アンフィニ(大阪市)は兵庫県稲美町のため池で、パネル6,846枚、出力約1.7MW、一般家庭500世帯分に相当する180万kW/hの発電を見込む、水上式としては国内最大規模のメガソーラーを今年4月に作っている。
生態系の影響も懸念されるが、藻の発生が抑えられ、むしろ水をきれいに保てるという隠れたメリットもあるようだ。
太陽光発電ができるような誰も着目していない空間を見つけるというのも、新たなビジネスチャンスにつながる一手になりそうだ。(つづく)
【大根田 康介】関連キーワード
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