デザインで生み出す防犯効果 実践的指導と都市公園の賑わいづくり(2)
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福岡大学工学部社会デザイン工学科
景観まちづくり研究室 教授
柴田 久 氏2014年「グッドデザイン賞」、15年「第26回福岡市都市景観賞」大賞を受賞した福岡を代表する都市公園「警固公園」。この素晴らしいデザインをかたちにしたのが、福岡大学工学部教授の柴田久氏。そして、当時の教え子たちだ。単なる学び舎としてではなく、実践的な技術研鑽の場として活動を続ける同研究室にて、話を聞いた。
――以前に比べ、現在の警固公園は昼夜問わず人が集い、皆、楽しそうに語らっています。
柴田 さまざまな調査結果をもとに、とくにこだわったのが公園内を『見える』ようにする、安心だと感じられるようにすることでした。見る、見られる、この関係をどうやって園内につくり出すのか。まずは新しい動線をつくりました。公園中央に広いスペースをつくり、その中心を抜ける通路も設けました。また、周辺の商業施設、ソラリアプラザ、西鉄天神駅、三越などからも見えるように木や、園内設備の配置、高さにも気を配りました。また、ソラリアプラザに関しては、公園のデザインに合わせて外観を変えてもらうことができました。これは本当に嬉しかったですね。公園の再整備を契機に、ガラス張りの壁面に変えてくれたんです。今では2階以上のカフェに上がれば、警固公園を一望できます。聞くところによると、客層も広がり、売上も1.5倍になったお店もあるようです。周辺施設のおしゃれなビルの外壁が見えるようになったことで、公園そのものもおしゃれに見えるようになりました。こういった技法を『借景』というのですが、おかげさまで周囲との調和の取れた、理想的な公園を生み出せました。
調和という点で言えば、園内の交番デザインにもご協力をお願いしました。交番に関しては担当が公園整備課ではなく、生活安全課でしたので、どうやってこちらの考えや想いを伝えようかと思っていたところ、たまたま対策会議の事務局のトップだった県警の方が市役所に出向されて、生活安全課の部長になられたんです。そこで私はその方にお願いして、交番のデザインに関して話し合う機会を得ることもできました。その結果、公園のなかにあっても違和感が生まれない、現在の外観にしていただくことができました。
――それほどの仕事に関われた学生さんたちには、かなり高レベルな勉強、経験になったと思います。
柴田 そうですね。公園周辺の商業施設の皆さんにはもちろん、県警、市役所、近隣住民の方へのプレゼン、使用する模型の作成、さらには公園の再整備に必要となってくる資材や材質に関する細かな打ち合わせも、学生たちに従事してもらいました。プレゼンで使用する模型に関しては、学生たちが細かいところまで自分たちでつくり込んでいました。公共事業ですから、決まった予算、期限のなかですべての動きをこなしていかなければなりません。再整備事業におけるパートナーのアーバンデザインコンサルタントさんを始め、交渉相手は現役社会人の方ばかりですから、学生たちは本当に苦労したでしょう。ですが、これから社会に出ていく学生たちにとって良い勉強になりますし、仕事の流れ、携わった多くの人たちの苦労、社会の厳しさを肌で感じてほしかったんです。この経験は貴重なものになったと思います。
実際、卒業後にこの経験を生かして、即戦力の建築技術者や設計士、デザイナーとして活躍している学生もいます。(つづく)
【代 源太朗】<INFORMATION>
■福岡大学
所在地:福岡市城南区七隈8-19-1
創 立:1934年
TEL:092-871-6631
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp■景観まちづくり研究室
所在地:福岡大学キャンパス内 5号館別館3F
TEL:092-871-6631<PROFILE>
柴田 久(しばた・ひさし)
1970年、福岡県出身。東京工業大学大学院 情報環境学専攻博士課程修了。景観工学、都市計画学を専門とし、景観デザイン論、まちづくり演習等の講義を担当。土木学会、都市計画学会、建築学会等に所属。2014年に『グッドデザイン賞』、15年に『土木学会デザイン賞最優秀賞』『第26回福岡市都市景観賞大賞』を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。関連記事
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