2024年11月24日( 日 )

「アベさん、ありがとう」~フツーの若者の安保法案反対(前)

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安保法案反対のデモでは、参加できない人が沿道から、若者に声援をおくる=9月13日、福岡市<

安保法案反対のデモでは、参加できない人が沿道から、若者に声援をおくる=9月13日、福岡市

 「安保法案を本当に止める」。若者たちは本気でそう思っている。同時に、強行採決された後も、終わらないと思っている。それは、国民一人ひとりが主権者であり、その声が、コールが、デモが、集会が、民主主義そのものだからだ。
 国会の多数を握っている自民、公明両党が国会会期末までの安保法案成立をめざし、緊迫するなか、国会前に集まっているのは、大学生を中心にしたSEALDsだけでなく、今ではミドルズ、オールズら、あらゆる世代に広がっている。
 安保法案が、自民・公明巨大与党に支えられた安倍政権というパンドラの箱から飛び出した「悪魔」だとすれば、今、箱の最後から「希望」が世に放たれた。若者たちが上げた反対の声は、日本に市民革命のような大きな変化をもたらした。

 今、安保法案に反対する福岡の若者でひそかに流行になりつつあるのが、「アベさん、ありがとう」だ。無関心だった若者に、安保法案という最悪なものを示して、自分たちが主権者だと気付かせてくれたからだ、というのである。
 福岡の若者たちは、衆院強行採決をきっかけに、SEALDsの影響をうけて、「FYM」(フクオカ・ユース・ムーブメント)をつくった。福岡市天神のデモや集会に参加するのは、フツーの大学生らであり、「もっと就活に専念したい」「人前でスピーチするのは初めて」「デモに対するイメージが良くなかったので参加したことなかった」という若者たちだ。

 「ネトウヨ(ネット右翼)が怖くて、周りの学生が実名で出しているのに、声をあげられなかった」という大学生もいる。
 大学4年生の興津ゆりえさん(22)もその1人。7月中旬、ツイッターで「安保法案」で検索してデモに参加した。本音は就活に専念したい。「他国の戦争に加担するのが怖いと思った。日本が攻められるというより、後方支援と言って、戦争に加担してしまい、一般の市民や子どもを傷つけてしまうことに危機感を感じた。SEALDsの奥田愛基さんのように動きたいなと思っても勇気が持てなかった」と語る。
 就活に影響があるとも言われ、ネトウヨが怖くて、実名を出して意見を言えなかった。それが、この2カ月間で変わった。「恐れずに自分の思うことをやろう、今やらなければ一生後悔する。もし成立したとしても、今行動した一人になったことが、次にもっと悪いことが起きても、次も行動を起こせる」と、興津さんは話す。

 若者たちが国会前で連日、コールする。「安倍政権はただちに退陣!ただちに退陣!退陣!退陣!」「安倍政権の暴走止めよう!みんなの力で絶対止めよう!」「戦争法案、今すぐ廃案!今すぐ廃案!」「廃案!廃案!」。

 憲法学者の水島朝穂氏が国会前で、「今、新しい民主主義が国会前で始まっている。『民主主義って何だ』って彼らが問うたら、『これだ』と言った。憲法やって33年、きょう初めて、憲法って何だって分かりました。これなんですよ。俺たちが人民なんです。それに反対するあそこにいる政権には退陣を願いましょう」と訴えたのは、7月31日だ。
 音楽家の坂本龍一氏は8月30日、国会前で、「憲法というのは世界の歴史を見ると、自分たちの命をかけて戦い取ってきたものです。日本の歴史の中では、日本人が戦い取ってきたものではなかったかもしれないが、今、まさにそれをやろうとしている。フランス人にとっての『フランス革命』に近いものが、今、ここで起こっているのではないかと思っています」とスピーチした。

 坂本龍一氏が言う「ここ」というのは、直接的には国会前だったが、国会前だけでなく、福岡市でもあり、北九州市でもあり、長崎であり、熊本であり、おそらく日本各地のことだ。

 「FYM」を中心に、福岡の若者を取材した。

(つづく)
【山本 弘之】

 
(中)

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