日本型GMSの本格終焉(中)
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流通アナリスト 神戸 彲
そして、日本型GMSが衰退を続けるもう1つの理由に店舗を始めとする商品提供環境の陳腐化がある。解りやすく言うと本来は消費者に還元するという顧客志向でそのし好変化に対応すべき投資を怠ったことである。
創業当時、若い低コストの労働力を甘い労基法のもとで高い生産性に結びつけたこの業態はその後発生する人件費をはじめとする販売管理費と出店コストの高騰に頭を悩ます構図に陥る。その結果、経費節減を優先するという誤った選択をしてしまった。もちろん、どんな業種でも経費を削減するというのは経営手段として妥当である。しかし、小売業の場合は、その経費のほとんどは固定費である。売り上げが低下したからといって、家賃や人件費や水道光熱費をそれに合わせるということはまず不可能だ。いうなれば売り上げの低下が即、経営に大きな悪影響を与えるということになるのである。
さらに悪いことに、大型タンカーのように機動性に劣る日本型GMSの隙をついて、SPAと呼ばれる企業や生鮮食品を省いて販売管理費の低減した小型小売業が市場を蚕食し始めたことである。ユニクロやニトリ、コンビニなどの業態がこれにあたる。
さらに売り上げを優先して価格で顧客確保を指向したディスカウントストアにもお客を奪われた。
一般消費者のニーズの第一はまず安いことである。次に近いが続く。さらに楽しさや安心、安全といった条件も加わる。図体ばかりが大きくなり、高コスト化した日本型GMSはこれらの条件のほとんどに応えられなくなってしまっているのは誰が見ても明白である。
結果として「消費者無視」のカタチに陥ってしまったということである。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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