2024年12月27日( 金 )

ダンロップタイヤ九州を元従業員が提訴(後)

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 中嶋厚氏は、2014年11月、関係者に手紙を送り、その後、ダンロップタイヤ九州に内容証明郵便を送ったり、労働局のあっせん制度を利用して、話し合い解決を求めてきたが、解決に至らず、15年8月、提訴に踏み切った。
 9月中旬から、ダンロップタイヤ九州本社前の路上に立ち、ハンドマイクで解決を求めて訴えている。妻や知人ら数人でのアピールだ。「社長は、直接会って話し合いに応じよ」「だまされた方が悪いのか。12年間を返せ。申し訳なかったの一言もないのか」。

苦難の人生、「罠にかけた辞めさせた責任問う」

ダンロップタイヤ九州本社前で解決を求める中嶋厚氏<

ダンロップタイヤ九州本社前で解決を求める中嶋厚氏

 中嶋氏によれば、在職中には、会社からの嫌がらせもあったという。
 1993(平成5)年3月頃のことだ。営業車両やポケットベル、机などを取り上げられ、「お前は仕事をしなくてもよい」と言われ、車がないと営業活動ができないので、知人の運送会社会長から車を借りて営業に回った。

 東亜ゴム販売の代表を退任した後の中嶋氏には、苦難の人生が待ち受けていた。
 タイヤ・ゴルフ用品販売の会社を立ち上げたものの、「会社の金を横領した」などの噂が流れ、タイヤ販売への嫌がらせを受け、立ち行かなくなったと、中嶋氏は振り返る。「神に誓って、噂になったようなことは一切していない」と言い、「いじめ、嫌がらせは、人の世の中ではけっして認められない」と憤る。
 体をこわし入退院を繰り返した時期もある。1999(平成11)年頃、貨物トラック業を始めたが、再生タイヤメーカーから不渡り手形をつかまされ、約1億5,000万円の負債を抱え、倒産。何度も自殺を考えた。
 中嶋氏は「ダンロップタイヤ九州は、私をだまして会社を追い出した責任を真正面から受け止めてほしい。人間らしい姿勢を見せてほしい」と語り、早期解決を求めている。

世界タイヤ業界4位の住友ゴムグループ

 ダンロップタイヤ九州は、住友ゴムグループの一員で、タイヤ販売部門の1社。1954年創業の南九州ダンロップタイヤ販売(株)が前身で、1979年に九州ダンロップ販売(株)と合併。2010年には、(株)ダンロップファルケン沖縄と合併し、現在の社名になった。
 住友ゴムグループの売上高は、8,376億円、うち海外売上高は4,415億円。タイヤ事業は売上高7,312億円(2014年12月期、海外含む)。国内地域販社は11社あり、ダンロップタイヤ九州の売上高は、162億5,800万円(2013年12月期)だ。
 タイヤ業界は大変化の波に洗われている。
 世界シェアはこの約10年間、ブリヂストン、仏・ミシュラン、米・グッドイヤーのトップ3の順位は変わらず、住友ゴムが4位につけている。
 トップ3が不動とはいえ、10年前には3社で5割以上を占めていたシェアは、4割以下に低下。住友ゴムは、じわりとシェアを増やしたが、とくに急伸しているのは、韓国や台湾、中国などの新興国メーカーだ。
 激変する市場環境のなかで、住友ゴムは、2020年に売上高1兆2,000億円、営業利益1,500億円を目標とする中期計画のさなかにある。15年6月には、グッドイヤーとのアライアンス契約と合弁事業の解消で合意。住友ゴムがダンロップブランドで展開できる地域が拡大し、成長が見込まれる新興国に集中していた開発製造拠点も、解消後は、欧米でも開発・製造が自由になる。また、欧州で強いファルケンブランドを世界で展開する計画だ。

 世界的な一流企業グループの一員であるダンロップタイヤ九州は、中嶋氏の訴えにどう応えるのか。10月1日に第1回口頭弁論が開かれる。

(了)
【山本 弘之】

 
(前)

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