マイナンバー「消費税還付案」迷走、あなたの会社の備えは?(後)
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個人番号カード普及とビッグバンデータへの活用
消費税の還付にマイナンバーを利用するのは、個人番号カードの普及や、将来の民間利用への布石だという見方もある。政府の世論調査でも、個人番号カードを取得するメリットは薄く、取得を希望する者は24.3%にとどまっている。消費税還付は、全国民にカードを持たせるための「アメ」と見られているのである。
マイナンバーの利用は、社会保障、税、災害対策の行政3分野に限定され、目的外の利用や提供は禁止されている。しかし、2015年9月に成立した改正法では、預貯金口座へのマイナンバーの付番が、本人同意を条件として可能とされているし、医療分野での利用範囲の拡充の検討も盛り込まれている。
また、民間事業者の営業目的利用は禁止されているが、法付則で「特定個人情報以外の情報の提供に情報提供ネットワークシステムを活用することができるようにすること」など、民間利用の検討がうたわれている。JR東日本のICカード「Suica」の利用データを本人が特定できないかたちで販売しようとした騒動があった。特定個人情報以外の情報の活用に道が開ければ、様々なカードと違って、国民全員に1人1個だけ持つ個人番号カードで、買い物情報を集積したら、そのビッグデータの利用価値は途方もなく大きい。いつから収集?年内は規定整備・周知を先行
通知カードの発送が始まるのに合わせて、企業にどのような対策が求められているのか。
具体的な対応は、(1)従業員らから集める、(2)源泉徴収票や雇用保険・健康保険・厚生年金保険の各届出書にマイナンバーを記載する、(3)集めた特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)を目的外に利用・提供しない、(4)集めた特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)を漏洩しないように管理する、の4点だ。要は、「集める」、「書く」、「目的外に利用・提供しない」、「漏らさない」、である。
一番の基本は、情報セキュリティを向上させなければいけないことだ。政府の資料では、年内に番号を収集し終えるようなイメージのスケジュールがあり、通知カードが届くのを目前として、マイナンバー対応策の広告・PRがあふれているが、慌てる必要はない。なかには、従業員300人以上の大企業を対象にした対策で、中小企業にはマッチしていないものもある。数十人規模の企業で、特定個人情報を収集管理するシステムを導入したり、セキュリティをかけた特別な部屋や監視カメラや個人認証システムを作る必要があるとは限らない。
政府が9月24日に公表した世論調査では、マイナンバー制度について「内容までは知らなかった」が46.8%にのぼった。中小企業にとって今必要なのは、周知徹底と、社内のルール作りだ。社内規定を整備しないうちに番号を集めたら、備えなしに、漏洩や法違反のリスクにさらされることになるので要注意だ。年内は、就業規則を含む規定を整備し、並行して業務マニュアルを整備しながら、従業員らへの周知を徹底し、収集は年明けでも十分間に合うと思ったほうが、現実的である。
(了)
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