韓国経済ウォッチ~SK,高性能ポリエチレン市場に挑戦(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「化学業界の米」と呼ばれているエチレン市場にも大きな変化が訪れようとしている。エチレンはいろいろな用途に使われている化学原料で、プラスチック、化学繊維などを作るのに使われている。化学会社では、石油から抽出されたナフサという原料からそれを熱分解してエチレンを作っている。エチレンはポリエチレン、酸化エチレン、塩化ビニルなど石油化学の主要原料でもある。なので、エチレンは石油化学会社の主要収益源である。
しかし、エチレンはナフサを原料にしているため、日本と韓国などは中東に比べるとどうしても生産コストが高くならざるをえない。中東でも天然ガスをベースにするエチレンが生産されているが、生産コストが10分の1にもならないようだ。さらに、中国の景気失速でエチレンは需要が減少しているだけでなく、中国は年間100万トンを超える大型エチレンプラントの新増設を予定していて、供給過剰も懸念されている。加えて、アメリカでは、シェールガス革命が起きていて、シェールガスを原料にした大型エチレンプラントが2016年~2017年にかけて相次いで稼動する予定になっている。このように「化学業界の米」と呼ばれているエチレンの市場状況は、今後石油化学業界に大きな変化をもたらすことが予想されている。そのような中で、韓国のSKグループでは、グローバル競争に勝ち残るため、今回サウジアラビアのSABICと提携してポリエチレン市場に参入を図っている。
それでは、今回はそれを詳細に書いてみよう。
SK総合化学と世界2位の石油化学企業であるサウジアラビアのSABICとが合弁で設立したSSNC(SABIC SK Nexlene Company)の蔚山(ウルサン)工場の竣工式が7日行なわれた。SSNCは、韓国のSK総合化学とサウジアラビアのSABICが50%ずつ株式を保有する形で設立された合弁会社である。今回竣工するようになった工場では、SKが独自開発した高性能ポリエチレン(ブランド名ネクスレン/Nexlene)を生産している。SKグループでは、崔泰源(チェ・テウォン)会長の指揮で2004年から高性能ポリエチレンの技術開発に着手し、11年ぶりに結実を見て今に至っている。今回竣工した工場は、高性能ポリエチレンを生産するSKグループのグローバル前進基地としての位置付けである。 SK総合化学は、石油化学分野の将来の競争力を確保するため、新業種の事業進出を検討していたが 、2004年、崔会長の指示により次世代ポリエチレンを研究することに着手した。当時、菓子袋などに使われていたポリエチレンは、高級化の波に乗って、全世界の化学企業などの角逐の場になっていた。普通のポリエチレンよりも衝撃に強く、衛生的で、加工しやすい次世代ポリエチレンを開発することは「化学技術の結晶」と呼ばれるほど注目を集めていた。市場も毎年10%ずつ成長していて、米国のダウ・エクソンモービル、日本の三井が市場シェアの60%を占めている状況で、簡単に参入できないくらい、参入障壁も高かった。
(つづく)
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