「ゼネコンは全部知っている」~専門家が語る旭化成建材のデータ偽装(前)
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三井不動産レジデンシャル(株)が販売した横浜市の大型マンション(2007年竣工)が傾いた問題で、10月20日、杭打ち工事を手がけた旭化成建材(株)とその親会社である旭化成(株)が、記者会見を開催した。会見では、現場代理人がデータ紙の紛失やデータ取得の失敗により、データを転用したことは認めているが、「不正を隠すために故意でやったことではない。杭も支持層に達したと思っている」と主張。この報道を専門家はどう見たのか。1級建築士・仲盛昭二氏に聞いた。
――記者会見をご覧になって、どのような見解をお持ちですか。
仲盛 見解を語る前に「データの転用」について説明しておきます。
以前は一般の敷地であれば、ボーリングは一カ所でした。しかし、ひとつしかデータがなければ、岩盤の起伏がわからず、どこを掘っても岩盤が地面と平行しているとしか判断できない。それで、今は最低3カ所になっています。岩盤が地面と平行していることはまずありえない。傾いたり、くぼみがあったり。当地は岩盤が波打っている地形だからです。そして波形と言われるのは電流計に表示されるもの。地面を掘って行って、固い地盤に当たると、より電流が必要となるので表示が激しく波打ちます。今回の場合、その波形が同一でした。この掘削作業で波形がまったく同じになることはあり得ない。一致しているということはデータを使い回しているということです。
さて記者会見への見解ですが、私は報道とは異なる見解を持ちました。――「報道とは異なる」とは、どのような意味でしょうか。
仲盛 私の主観ですが、「ゼネコンは全て知っています」。そのうえで、旭化成に責任を押し付けている。旭化成は重機を持ちません。管理しなければならないのは当然ですが、ほぼ工事を受けた地場の下請業者に外注しているはずです。しかし杭のほとんどが受注品なのです。もし下請が杭の長さが想定よりも短いと気づいて、「もっと杭の長さが必要だ」と訴えそれが例えゼネコン側の耳に届いたとしても、ゼネコンの監督は聞かないふりをします。聞けば長さの合わなかった杭を持って帰らないといけない、そして適切な長さの杭を作り直さなければならない。そんなことをしていては1週間、10日かかり、お金もかかります。
さらに今回は既成コンクリート杭。杭打ちしている時には、もう横に生コン車が来ている。打ち直しになると、生コン車も無駄になる。それをしないように、岩盤まで届かない杭のまま、工事を終わらせてしまった。それが今回の誤魔化しの真相だと思います。杭の短さを真面目に訴えた下請は嫌われてしまうし、追加の費用はもらえない。
真面目なほど、下請は仕事で干される。ゼネコンの監督は現場の諸事情を全部知っています。でも都合の悪いことは知りたくない、知らされて自分で判断したくないから、聞かぬふりをする。
当件の場合、ゼネコンですが、報道中に三井住友建設(株)の名前があまり出てこないのは、おかしい。どうも口裏を合わせて、会社にとってのダメージを最小限にとどめるシナリオを作っているように感じます。(つづく)
【文・構成:東城 洋平】▼関連リンク
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