「ゼネコンは全部知っている」~専門家が語る旭化成建材のデータ偽装(後)
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三井不動産レジデンシャル(株)が販売した横浜市の大型マンション(2007年竣工)が傾いた問題で、10月20日、杭打ち工事を手がけた旭化成建材(株)とその親会社である旭化成(株)が、記者会見を開催した。会見では、現場代理人がデータ紙の紛失やデータ取得の失敗により、データを転用したことは認めているが、「不正を隠すために故意でやったことではない。杭も支持層に達したと思っている」と主張。この報道を専門家はどう見たのか。1級建築士・仲盛昭二氏に聞いた。
――コストアップ、納期のプレッシャーが今回の事態を招いたということですか。
仲盛 現場管理さえしっかりさせていれば、このような事態にはなりません。電流の波形をみれば、必要な杭の長さもわかります。岩盤が想定よりも浅いところにあれば、杭を切るだけでいい。しかし、足りない場合は様々な追加コストが発生します。さらには納期も迫ってくる。このプレッシャーが生んだ事態です。ゼネコンは全部の責任を下請に背負わせて、知らんぷり。文句の言えない下請、その重層構造もひとつの要因なのでしょう。会社を守るために、下請もそうせざるを得ない。このようなケースは全国で起きているとみていいと思います。旭化成建材は受注して、下請に流しているだけで、末端の下請が工事をしているわけですから。どこが受注しても、地場の下請業者が工事を手がけていますから。
――建て替えで問題の解決になるでしょうか。
仲盛 建て替えるにしても、住民の8割の同意が必要になります。「立て替えないと心配で住めない」と頭では理解していても、年配の方は引っ越したくない。高齢者にとっては、引っ越しは恐怖に近いものがある。環境が変わってしまうこと、生活基盤が崩れることを望まないのです。ですから、この8割という数字はとてもハードルが高いのです。このケースでは、沈んでしまった棟の住民だけでなく、団地全体の8割の同意が必要。傾いてもいない棟の住民は同意するでしょうか。だから現実的には建て替えは無理でしょう。住民集会でも意見はまとまらないと思います。きっと旭化成もそのことをわかっていますよ。
――仮に建て替えるとして、どれぐらいの費用がかかるでしょうか。
仲盛 私の試算では、解体から建て替え、引っ越し費用などすべて含めて400億から500億はかかるだろうと見ています。杭を引き抜くだけでも大変な作業で、莫大な費用がかかります。さらにあれだけ住宅が密集しているところで、多数の杭を引き抜けば、地盤に大きな影響を与えることになる。杭を埋め殺す方法もあるが、その場合はすでに柱が埋まっているので、柱の位置を変えねばならない。柱の位置が変われば、建物自体のプランが変わってくる。そうなれば、さらに住民の合意を得るのは難しいでしょう。
(了)
【文・構成 東城 洋平】▼関連リンク
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