2024年11月24日( 日 )

福岡市、西鉄との共同事業に不透明な意思決定プロセス(中)

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福岡市BRT、決裁急いだ理由

2024 新しい交通プロジェクト(都心循環BRT)のイメージ図
(福岡市のホームページ「市長のオフィス」から)

 福岡市の都心循環BRTと連節バスを「新しい交通プロジェクト」として福岡市が華々しく記者会見したのは2015年4月16日。その後、記者会見の翌日に決裁されて同20日に発表されたプレスリリースがある。都心循環BRTが環境省の補助事業に採択されたことを知らせる内容だ。西鉄が応募し、福岡市が共同事業者になっている。

 連節バスは、総合交通戦略で取り上げられてもいないのに、市と西鉄との担当部署の間の協議だけで一足飛びに採用されることになり、15年3月17日に方針決定が起案された(決裁は同30日)。西鉄側が同年1月下旬に提案してからわずか2カ月足らず。
 その間の協議や、提案を採用するにあたって市がどのように検討したかを示す公文書がない(少なくとも情報公開で開示されていない)。交通戦略協議会で議論していないのだから、新しい交通プロジェクトに関する有識者会議が設置されて良さそうだが、設置もされていない。識者や地元関係者から意見を聞いて、BRTや連節バス導入の是非、コスト、ほかの手法との比較検討を行った形跡はない。
 市公共交通推進課は取材に対し、連節バス導入にあたって「他の手法と比較検討していない」と認めている。

 西鉄の提案を丸呑みするように、市の意思決定を急いだのはなぜか。
 ある関係者は「西鉄が環境省の補助事業に応募し、それに採択されたことが公表されるので、あわてて高島市長の4月16日の記者会見がセッティングされた」と語る。

 環境省の補助事業とは、2014年度から始まった「低炭素化に向けた公共交通利用転換事業」のことだ。マイカーから二酸化炭素排出量の少ない公共交通へのシフトを促すため、民間企業や自治体を対象に、事業費の2分の1を補助するものだ。

環境省の補助事業応募・採択に合わせる

 15年度の公募は、3月16日に公表され、同日受け付けが開始された(受け付け締め切りは3月31日)。連節バスを最終的に15台導入する西鉄は、環境省の補助事業でBRTを実施すると決めて早くから動いていた。
 応募するには、共同事業者の福岡市もBRTと連節バス導入、補助事業への応募を決定しなければいけない。当然、市のBRTと連節バスの導入決定と、環境省の補助事業への応募はセットだったわけだ。
 福岡市がBRTと連節バス導入の方針を起案した3月17日とは、環境省の公募が公表された翌日。締め切りに間に合うように決裁している。

 15年度の公募がいつになるか事前に公表されていなかったが、対象事業者が限られているため、環境省や国土交通省が、BRTなどを実施したい事業者がいないかどうか事前に発掘した。また、採択にあたっては、公募締め切りから3週間程度で補助対象事業を内示し、その後交付申請書の提出を受けて交付が決定されるスケジュールだった。応募から内示まで、西鉄は環境省の公表するタイミングを事前に知っていたことになる。
 ところが、内示が予想外に早かった。
 「市職員がバタバタ準備していた」と関係者は言う。高島市長が4月16日に記者会見することが決裁されたのは4月9日だ。「環境省の発表後では高島市長のお得意のパフォーマンスにならないので、環境省の発表前にぶちあげた」。

 2014年5月改定「福岡都市交通基本計画」
 2014年9月「ウォーターフロント地区再整備の方向性」
 2015年1月下旬、西鉄が福岡市に連節バスを提案
 2015年2月20日 市議会第4委員会に「福岡市総合交通戦略」の内容説明
 2015年3月2日 「福岡市総合交通戦略」策定(3月11日公表)
 2015年3月16日 環境省の補助事業公募開始報道発表
 2015年3月17日 BRTと連節バスの方針起案(3月30日決裁)
 2015年3月30日 環境省補助事業への応募を起案、決裁
 2015年4月16日 市長らBRTと連節バス導入記者会見(4月9日供覧決裁)
 2015年4月20日 環境省が補助事業採択発表

(つづく)
【山本 弘之】

 
(前)
(後)

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