日本発の情報セキュリティ国際会議が開幕!(前)
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10月28日‐29日の2日間、日本発の情報セキュリティ国際会議である第3回「CODE BLUE」が東京・新宿で開催された。会場には第2回を大幅に上回る600名を超える参加者が12カ国(日本、中国、韓国、台湾、マレーシア、アメリカ、ドイツ、ロシア、イギリス、ポルトガル、レバノン、インド)を超えて参集した。今回は新たな試みとして、U25枠が設けられ、満24歳以下の講演者が2名登壇した。また講演者の数も増え、講演は1トラックから2トラック構成(2会場並行)になった。
佐々木良一CODE BLUE実行委員会委員長(東京電機大学情報セキュリティ研究室教授)、篠田佳奈実行委員(CODE BLUE事務局)の挨拶に続き、神戸大学名誉教授・中之島科学研究所研究員、松田卓也氏の基調講演「シンギュラリティがやってくる」が行われた。
2029年に「プレ・シンギュラリティ」が出現する
松田氏は講演のなかで、「シンギュラリティとは、人工知能が発達して、人間よりはるかに知的能力の高い“超知能”ができること」と定義した。そして、その“超知能”とはどのようなもので、政治・経済・技術・軍事にどのような影響をおよぼすのか、また日本における“超知能”作成へのロードマップについても言及した。
松田氏は、シンギュラリティの起きる時期について、ニック・ボストロム(スウェーデン人の哲学者、オックスフォード大学教授)の「専門家へのアンケート」を披露。それによると、2020年代は10%、2040‐2050年は50%、21世紀以内は90%、起きないは10%となっている。このことを踏まえ、松田氏は、レイ・カーツワイル(未来学者、実業家)の説を支持、「人類が技術的特異点“シンギュラリティ”に到達するのは2045年で、その前の2029年には前特異点“プレ・シンギュラリティ”がやってくる」と語った。
専門家の多くは「脅威を感じていない」と語った
シンギュラリティが起こると、科学技術は爆発的に進化し、「技術的失業」など人間生活に大きな影響をおよぼしてくる。それは良い世界なのか、悪い世界なのか――。松田氏はニック・ボストロムの「専門家へのアンケート」を再び引用、極めて良い20%、まあ良い40%、中立15%、かなり悪い15%、非常に悪い10%とし、つまり「20+40%=60%で、専門家の多くは脅威を感じていない」と語った。
シンギュラリティ後の現実世界は、どのようなものだろうか。その答えを求めるにあたって、松田氏は、「超知能と人類は共存可能か?」「国家間の格差は拡大しないか?」「個人間の格差は拡大しないか?」という3つの問いを発した。そして、“超知能”を持てる国が21世紀の先進国になり、持てない国が発展途上国になる可能性もある。また「エリジウム」的世界(ギリシャ神話で、神々に愛された人々が死後に住む楽園)が出現、金持ちだけが救われる社会になる可能性もあると語った。
さらに、ギリシア・ローマ時代をオーバーラップさせ、「将来はコンピュータやロボットが生産や仕事をして、人間は学問、スポーツ、遊びだけをする社会が出現するかもしれない」と付け加えた。そのためには指導者層が覚醒することが必要である
最後に、松田氏は「日本はシンギュラリティによって、労働生産性は爆発的に向上し人間生活が豊かになる。250年前の人類最初の産業革命に続く、“第2の産業革命”を起こすべきだ」と持論を展開した。続けて、「そのためには、指導者層(政治家、官僚、企業家、メディア)が覚醒することが必要である。現状のままでは、日本は置いて行かれる。皆さんも21世紀を担う人材として、頑張って欲しい」と会場にエールを送った。
医療機器において情報セキュリティの脅威が顕在化
初日の午前中に興味を持った講演があった。「医療機器のセキュリティ」と題した、フローリアン・グルーノ氏の講演・デモである。情報技術の発達によって、家電製品をはじめ、さまざまな製品にコンピュータやソフトウェアが組み込まれるようになっている。そして昨今、日本でも、医療機器において他の組み込み機器同様に、情報セキュリティの脅威が顕在化している。
フローリアン・グルーノ氏はドイツ・ハイデルベルクの情報セキュリティ企業、ERNW社のセキュリティ・アナリストである。コンピュータサイエンスの理学修士、医療情報学の学士号を持っている。グルーノ氏は、「病院内ではハイテクな医療機器が増加している。また、ホームモニタリングの大きな市場も存在し、今後はこれらの機器の情報セキュリティがより重要になってくる。しかし、調査をすると、麻酔機器など重要な役割を担っている医療機器は、基本的なセキュリティの仕組みを欠いていることが明らかになった」と警告を発した。
病院内のIT・情報セキュリティの調査結果を報告、会場では実際に医療機器のデモが行われた。そのさまざまな攻撃や患者を殺してしまうことさえある検知不可能な攻撃シナリオがWiFiなどで、”簡単に“実行できてしまうことはとても恐ろしい。(つづく)
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