需要減少で低迷する印刷業界~忍耐か変革か(2)
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低迷し続ける印刷需要
市場縮小の主な要因は印刷需要自体の低迷にある。それをさらに加速させたインターネットの普及。「活字離れ」がネットによるものかどうかはさておき、容易に情報が入手できるようになり、本が売れず出版不況と言われるようになったことは間違いない。電子書籍の登場も、出版印刷不調に拍車をかけた。
また、ネット普及により紙媒体以外のオプション(選択肢)が増えたことで、商業印刷の市場までも縮小した。続く不況や増税などにより企業の広告宣伝費が制限され、広告やチラシ・会社案内などの販促ツールの需要が減少したことも影響した。もちろん、メールの発達により手紙などの連絡手段が簡素化され、印刷業が従来担っていた役割に取って代わられた部分は少なくないだろう。ネットによる「印刷通販」の台頭は、既存の印刷会社に大きなインパクトを与えた。Web上での受注を主体とするため、営業担当者にかかる人件費が削減されるほか、複数種類の印刷物を同時印刷することでスケールメリットを得ることができるなどによるコスト削減で、従来型の印刷会社に比べて価格を低く抑えることが可能となった。また、「印刷代の相場がわからない」というイメージを持たれていたなかで、価格を提示して透明性を打ち出したことで優位性を得た。
ネットの影響は、ほかにもある。既存の印刷会社の多くがネット上での受注を手がけはじめ、発注側が容易に見積もり・発注ができるようになり、利便性が向上した反面、手軽に各社の受注額を比較することも可能となった。印刷物は成果物での差別化が難しい点もあり、価格競争が激化した。過当な価格競争によって、受注をとるため自ら料金を引き下げ、その結果経営維持が困難になるという、長期的な視点でみると自らの首を絞めるような事態も起こった。
ほかに受注減少の理由としては、少子化、小ロット化の進行、 DTP(デスクトップパブリッシング)やオンデマンド印刷、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)の普及、家庭用プリンターの高機能化、 クライアントによる用紙の支給の増加などが挙げられる。
コスト高の波
印刷業界には、需要減に加えてコスト高の波も押し寄せた。
急激な円安により、木材チップやパルプなどの原材料が高騰した影響で印刷用紙などが値上がりした。紙代については、安価な外国産の紙を使用してコストを下げる手もある。しかし、日本人は日ごろから高品質な紙に慣れていると言われており、質の低い外国産の紙で代用することは難しい。また印刷業は設備投資にかかる費用が比較的高い。印刷技術自体が年々向上し、印刷機やシステムが刷新されるスピードも上がっており、新機種が次々に生まれている。低価格、高品質、短納期を条件として競争が行われているなかで、デジタル化についていけずクライアントの要望に応じられなくなる企業も出てきた。
東日本大震災の影響
「東日本大震災が印刷業界に及ぼした影響は大きい」とは中小印刷会社経営者の声。宮城県石巻市の日本製紙石巻工場など紙パルプ製造工場やインキ原料製造工場は東北地方に集約されており、震災によって人命の喪失、建屋の全半壊、設備の損壊、製品の破損などの甚大な被害を受けた。生産能力減少による印刷用紙の在庫不足や、インキに不可欠な主要原料の製造不能という緊急自体に陥った。各種印刷用資材の供給が滞ったのに加え、自粛ムードが蔓延し、イベントの中止などによって受注減少を招いた。
(つづく)
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