2024年12月23日( 月 )

私立高校の自衛隊コース新設と体験入隊(前)

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拓殖大学地方政治行政研究所客員教授 濱口 和久
私立高校が「自衛隊コース」を新設 

私立高校の自衛隊コース新設と体験入隊(後)産経新聞(9月8日付)は、平成28(2016)年度から、高知市の私立高知中央高校が普通科のなかに「自衛隊コース」を新設するという記事を掲載した。同記事によると、自衛官にふさわしい人材の育成を目標とした「自衛隊コース」を普通科に新設し、週6時間を柔剣道にあて、自衛隊に関する座学を授業のなかに取り入れる。高知中央高校の近森正久理事長によると、座学では現役の自衛官やOBを講師として招く予定で、3年次には自衛官の採用試験対策も実施していくという。

 同校は昭和38(1963)年に開校された。普通科と看護学科がある。普通科は現在、国公立進学コース、フードビジネスコース、スポーツコース、あきんど商人コース、人間力アップコース、エンターテインメントコースの6つあり、定員は全部で160人。「自衛隊コース」新設にともなう増員はない。なお、「自衛隊コース」では、自衛官に限らず、警察官や消防士の育成も行う。自衛隊高知地方協力本部は、「他校と同様に、依頼に応じて講話を行うなどの協力をしていく」としている。

 同校の近森理事長は、今回の「自衛隊コース」新設の理由について、「高知県では年間約100人が自衛隊に就職したり、防衛大学校に進学したりしており、需要があると判断した。心身ともに鍛えられ、忠誠心をもって日本の国防にあたれる人材を育成したい」と話す。以上が産経でも紹介された高知中央高校に関する記事の概要である。なお、同校の入学案内には、同コースについて「日本における防衛組織である『自衛隊』をよく知ることにより、日本を取り巻く国際情勢などを身につけ『社会の若きリーダーとなる生徒の育成』を目指していきます」とある。

 一方、神奈川県横須賀市には、16歳から自衛官を目指す陸上自衛隊高等工科学校がある。ここでの教育内容は、3年間を通じて普通科高校と同様の教育を行う「一般教育」、自衛隊専門的な技術の教育を行う「専門教育」、陸曹候補者として必要な防衛教養や各種訓練を行う「防衛基礎学」を主たる教育として実施している。まさに自衛官の卵を養成する日本で唯一の学校となっている。卒業生は、同校の前身である少年工科学校の設立から1万8,000人を数え、全国の部隊などにおいて、中核となる陸曹として、あるいは幹部として活躍している(海上自衛隊と航空自衛隊にも同校に相当する学校があったが、平成19(2007)年度の入学者を最後として、生徒募集を中止した)。

 高知中央高校の場合は、自衛官への採用が100パーセント保障されていないなかでの「自衛隊コース」を新設するということになる。他校にない画期的とも言える取り組みであるだけに、来年4月に新入生として「自衛隊コース」に入学してくる生徒には、高知県内のみならず、他県からの入学者も含まれているだろう。同校の「自衛隊コース」新設について、批判的な報道をしているマスコミもあるが、好意的に捉える評価もあり、今後も同校の取り組みは注目されていくだろう。
(つづく)

<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、日本政策研究センター研究員、栃木市首席政策監などを経て、現在は、拓殖大学日本文化研究所客員教授、一般財団法人防災検定協会常務理事、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスターなどを務める。著書には、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。『探訪 日本の名城 戦国武将と出会う旅(上巻・下巻)』(青林堂)などがある。公式HPはコチラ

 
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