私立高校の自衛隊コース新設と体験入隊(後)
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拓殖大学地方政治行政研究所客員教授 濱口 和久
「フォーラム21」の体験入隊前回紹介した私立高知中央高校のように、「自衛隊コース」を普通科に新設するという教育施設が現れた。その一方で、自衛隊を研修の場として活用する民間企業が増えているという。毎年4月、入社した新入社員対象の、新人研修として自衛隊への体験入隊を行っている企業は以前から珍しくはなかったが、最近では、体験入隊を希望する企業が増えており、順番待ちの状態が続いている。
研修を行うのは新入社員だけではない。今年7月には、官界・経済界の将来のリーダーたちが参加する異業種交流グループ「フォーラム21」の会員が体験入隊を実施した。「フォーラム21」とは21世紀を担う指導者の育成を目的として、昭和62(1987)年8月、当時、日本電信電話社長であった真藤恒氏、富士ゼロックス社長の小林陽太郎氏、ユーエスコーポレーション社長の梅津昇一氏の3人の財界人が中心となって設立したグループである。
「フォーラム21」では(1)官界、経済界における指導者の育成、(2)幅広いヒューマンネットワークの育成、(3)変革集団の形成を目的に、一部上場企業の社員、中央省庁の中堅・若手官僚らが参加。各分科会などで「安全保障・外交・平和」などをテーマに日頃から研修を行っている。1期を1年とし、これまでに27期約900人が修了した(自衛隊専門紙・朝雲新聞平成27年9月10日付より)。
以下、朝雲新聞の記事を参考として、「フォーラム21」の体験入隊の模様を紹介していく。今回、「フォーラム21」の会員が体験入隊した部隊は、陸上自衛隊第34普通科連隊(板妻駐屯地)だ。隣接する東富士演習場でも研修が行われた。「フォーラム21」の会員による第34普連での体験入隊は今年で6回目となる。男女63人が参加(女性は3人)。参加者の平均年齢は45歳であった。参加者たちは、入隊1日目に基本教練などを体験した。2日目は早朝午前4時に非常呼集で起こされ、5時から東富士演習場で行軍を開始し、9時半すぎに板妻駐屯地に到着後、発声駆け足を行い、団結の強化を図った。
「当初、慣れない団体行動、指揮者の号令によって行動を律せられる基本行動に戸惑っていた参加者たちであったが、各課目を通じて相互に協力してリーダーシップやフォロワーシップ、団結の重要性を学んでくれたと思う」「(各職場に戻った時に)任務に対する心構え、とくにつらい時こそ発揮されるけん引力と影響力を持っていただきたいということに留意し、(各課目を)実施した。真摯に取り組む姿勢が印象に残った」(担当訓練教官のコメント)。
教育施設においても自衛隊への関心が高まるなか、企業人を対象とした体験入隊を実施することは、今まで以上に絶好の広報活動となる。体験入隊を通じて自衛隊と国民との距離が近づいていくことは、日本全体の国防力の強化にもつながり、防衛思想の普及にも役立つに違いない。(了)
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、日本政策研究センター研究員、栃木市首席政策監などを経て、現在は、拓殖大学日本文化研究所客員教授、一般財団法人防災検定協会常務理事、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスターなどを務める。著書には、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。『探訪 日本の名城 戦国武将と出会う旅(上巻・下巻)』(青林堂)などがある。公式HPはコチラ。関連キーワード
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