漫画・アニメの夜明けを演出した加藤謙一!(前)
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11月21日(土)の午後6時、池袋にある豊島区生活産業プラザ8F多目的ホールで第6回「トキワ荘フォーラム」が開催され、80名を超える参加者があった。第1部の基調講演は「『漫画少年』とトキワ荘の時代―世界的なアニメブームのルーツを探るー」と題して、独立行政法人国立公文書館館長の加藤丈夫氏が登壇した。
なぜ、彼らがトキワ荘に住むようになったのか
加藤丈夫氏は富士電機株式会社会長、企業年金連合会理事長、日本経済団体連合会労使関係委員長、経済同友会幹事、学校法人開成学園理事長など歴任した財界の重鎮である。しかし、今回はこれらの経歴とは違うもう1つの顔、講談社『少年倶楽部』編集長を歴任、『漫画少年』(学童社)を創刊して、「日本漫画・アニメの夜明けを演出した」伝説の編集者、加藤謙一氏の四男としての登壇である。日本の漫画・アニメは、今日本が誇るクールジャパンの旗手であることは論を待たない。そして、そのルーツが「トキワ荘」にあることは、日本はもちろん、欧米、中国、台湾など世界の子供、若者に知られている。その理由は、トキワ荘が手塚治虫を筆頭とする日本を代表する漫画家たちの「梁山泊」だったからである。では、なぜ、彼らがトキワ荘に住むようになったのか。加藤氏の話はそれを解き明かしてくれた。
学童社という会社を興して少年雑誌を発行する
加藤謙一氏(加藤丈夫氏の父)は25歳で講談社に入社、その3カ月後に、『少年倶楽部』編集長に異例の抜擢を受け、在任中に最大発行部数を80万部まで伸ばし、1945年に49歳の若さで取締役に就任している。しかし、終戦と同時に講談社を退社、その後、『野球少年』(尚文館)の発行を手伝っていたが、1947年には公職追放になり、完全に無職となった。同じ1947年の初秋、ある日曜の午後、謙一氏は、家族たちに自分の書斎に集まるように声をかけ、「今度、わが家では、学童社という会社を興して少年雑誌を発行することになった。残念ながら、私は公職追放になる身だから、社長はお母さんになってもらう。雑誌の名前は『漫画少年』と決めた。経理などは親戚の人に手伝ってもらうつもりだが、『漫画少年』を作るのは、ここに集まった家族全員だ。皆で力を合わせてどうしても成功させなくてはいかん。よろしく頼むよ」と演説した。その時、家族全員がキョトンとしたそうである。それもその筈で、この時、加藤家には7人の子供がいたが、1番上が19歳の長女で、丈夫氏は小学生3年生、1番下は生まれたばかりの赤ちゃんだったからである。
漫画家志望の少年たちの投稿を中心に編集する
雑誌『漫画少年』の発行は決まったが、学童社には資金力がない。有名作家には中々頼めない。そこで、謙一氏が考えたのは全国の優秀な漫画家を志す少年たちの投稿を中心に編集構成することであった。入選者は名前と作品が載ると同時にメダルも貰えた。そのうち、「『漫画少年』の選考は厳しいが、入選すればかなり認められる」という評判が広がっていく。何度か入選して、いくつもメダルを持っていることが、漫画家を志す全国の少年たちの間でステイタスのようになっていくのである。そんなある時、謙一氏は何の前触れもなく、フラリと訪ねてきた、手塚治虫と運命的な出会いをする。そして、手塚治虫がその時に持っていた原稿「ジャングル大帝」の『漫画少年』連載を即決している。これが謙一氏と謙一氏を“父のように慕う”手塚治虫との長く続く交際の始まりである。その後、「ジャングル大帝」で東京デビューした手塚治虫は、すぐに連載を7、8本抱える超人気作家になり、各社の編集者に追い回され雲隠れしてしまうようになった。
手塚治虫と一緒に生活して一緒に仕事ができる
そこで、謙一氏は一計を案じた。当時学童社で漫画家の世話係をしていた宏泰氏がちょうど結婚して「トキワ荘」に住んだ機会に、その「トキワ荘」に手塚治虫も一緒に住むことを勧めたのである。そうすれば、どこに雲隠れしても、最終的にはトキワ荘に帰って来ると考えたからである。その後も『漫画少年』に入選常連の少年が上京、学童社を訪ねて来ると謙一氏はトキワ荘に住むことを勧めている。もちろん、彼らは手塚治虫と一緒に生活できる、一緒に仕事ができると言うだけで皆大喜びだった。そして、寺田ヒロオ、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、水野英子など戦後を代表する漫画家たちが住むようになっていった。
最後に加藤氏は、「現在の漫画には暴力や性描写のものが増えているが、今欧米でもアジアでも認められているものの多くは、『漫画少年』時代のもの(ロマン、夢、ヒロイズム)が多いのではないか」と結んだ。
~『漫画少年』創刊の言葉~
漫画は子供の心を明るくする 漫画は子供の心を楽しくする
だから子供は何より漫画が好きだ
漫画少年は子供の心を明るく楽しくする本である
漫画少年には、子供の心を清く正しく育てる小説と読み物がある
どれもこれも傑作ばかり、
日本の子供たちよ、漫画少年を読んで清く明るく正しく伸びよ!(つづく)
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