2016年中国経済展望~人民元が「主要通貨」の第3位に!(2)
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(株)アジア通信社代表取締役社長 徐静波氏
本当の意味の誠心誠意な交流は復活していないのでは?
――15年の日中経済関係を振り返っていただけますか。11月頃から年末にかけて、日本と中国の経済団体の交流が活発化しました。
徐 かつて、外交が悪化しても経済の関係は強まる「政冷経熱」が日中関係でしたが、2009年を最後に日本の財界トップと中国首脳の会談はありませんでした。ところが、11月4日に、李克強首相は北京市内で日中経済協会(宗岡正二会長)など日本経済界の代表団と会談し、中国の今後5年間の経済方針(13次5カ年計画)を伝えています。日本の財界トップと中国首脳の会談は6年ぶりのことです。この時の雰囲気を「今年は空気が一変した」と伝えた日本の新聞もありました。
また、昨秋から2度、習近平国家主席と安倍晋三首相が首脳会談し、今年11月には李首相も安倍首相との首脳会談で、「日中ハイレベル経済対話」の早期再開を合意しています。これは中国と日本双方の経済界にとって歓迎すべきことです。しかし、私はまだ「本当の意味の誠心誠意を尽くす交流は復活していないのではないか?」と厳しい見方をしています。その大きな理由の1つは、日本の安倍首相が安保政策などで、「歴史問題」や「領土問題」に強く執着していることです。これらの問題は、多くの日本の識者も指摘しているように、いくら議論してもすぐに解決できるものではありません。そこにこだわれば、一歩も先に進むことはできません。安倍首相は、最近「南シナ海」と関係のない国に外遊する際も、空港の記者会見などで、「南シナ海」問題に言及します。中国首脳にとっては当然ですが、中国国民にとっても、あまり気分のいいものではありません。
これは政治の話なのですが、安倍首相が結果的に長期政権になっているので、経団連を筆頭に日本の経済団体は全て歩調を合わせていかざるを得なくなっています。14年7月27日から29日に、福田康夫元首相が北京を訪問、習近平主席と非公式の会談を行った際、習主席は3つの「不清楚」(わからない)を語り、中国政府の困惑を表明しました。
1つ目は「安倍首相は、どのように中国と付き合おうとしているのかわからない」、2つ目は「日本が決定した集団的自衛権は、どのような目的を達成するためなのかわからない」、そして3つ目は「安倍首相が推進している『積極的平和主義』は何をしようとしているかわからない」です。世界の通貨の中で、かなり前から人民元は第2位、3位に
――話を経済に戻します。今年は、中国経済にとって、大きなできごとが3つありました。まず、師走直前に飛び込んできたニュース、人民元が「主要通貨」の第3位になったことです。
徐 中国国民にとって、とてもうれしいニュースです。国際通貨基金(IMF)は11月30日の理事会で、加盟国にお金を融通するための「特別引出し権(SDR)」と呼ばれる準備通貨を構成する通貨に、来年10月から中国の「人民元」を正式に加えることを決めました。SDRの構成比は、米ドル41.9%、ユーロ37.4%、中国人民元10.92%、日本円8.33%、英ポンド8.09%で、人民元は主要通貨の第3位になりました。
貿易規模、経済規模で言えば、人民元は、世界の通貨の中で、かなり前から2位、3位の状態にありました。その点から考えると、人民元が主要通貨にならないのはおかしいと考えていました。しかし、人民元が主要通貨になれば、米ドルを基軸とした世界の通貨システムの中でも、中国の存在が高まり、アメリカの存在感が相対的に低下するとも考えられていたのです。恐らく、9月に習近平主席が訪米した際、オバマ大統領との会談の中で、オバマ大統領も納得して「Yes」のサインを出したのだと思います。
(つづく)
【金木 亮憲】【注】特別引出し権(SDR):IMFによって創出・配分された準備資産。外貨準備不足を来した国は、IMFの指定する国にSDRを引き渡すことによって被指定国から交換可能通貨を引き出すことができる。国際流動性の不足に対応するため、金、ドルなどの準備資産を補完する目的で1969年のIMF協定改正により創出された。
<プロフィール>
徐 静波(ジョ・セイハ)
政治・経済ジャーナリスト。(株)アジア通信社社長、『中国経済新聞』編集長。中国浙江省生まれ。1992年に来日し、東海大学大学院に留学。2000年にアジア通信社を設立し、翌年『中国経済新聞』を創刊。2009年に、中国ニュースサイト『日本新聞網』を創刊。著書に『株式会社 中華人民共和国』(PHP)、『2023年の中国』など多数。訳書に
『一勝九敗』(柳井正著、北京と台湾で出版)など多数。日本記者クラブ会員。
経団連、日本商工会議所、日本新聞協会等で講演、早稲田大学特別非常勤講師も歴任。
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