2016年中国経済展望~人民元が「主要通貨」の第3位に!(3)
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(株)アジア通信社代表取締役社長 徐静波氏
中国主導の国際金融機関をつくりたいと考えていたのです
――2つ目は、AIIBの創設です。この点についてコメントをいただけますか。
徐 AIIBはアジア地域開発を支援する機構で、インフラ建設に重点を置くものです。募集締め切りの3月31日までに、48の国・地域が参加を表明しました。(最終的には57の国や地域が加盟)その中には、イタリア・フランス・ドイツなどのEU諸国、イギリス・オーストラリア・韓国などアメリカから参加を牽制されていた親米国も含まれています。G7では日本とアメリカを除く5カ国が参加しています。このことによって、中国が世界の資本市場において、より大きな役割を果たすようになることは間違いないと思います。
従来、世界の国際金融機関はアメリカ主導の世界銀行(WB)、日本主導のアジア開発銀行(ADB)の2つだけでした。中国はWBに4.42%、ADBに6.5%出資しています。しかし、あくまでも中国主導の国際金融機関をつくりたいと考えていたのです。それには、これからお話する中国の壮大な計画、アジアとヨーロッパ市場の経済交流を緊密化させる「一帯一路」の構想が背景にあります。
日本は近隣「一衣帯水」で、日系企業の約3.5万社が中国に進出、拠点を置いています。ぜひ、AIIBに参加して欲しいと思っています。日本は少子高齢化が進み、東北復興やオリンピックが終わると、国内に大きなインフラ市場はほとんど残りません。そこで、港整備、新幹線、高速道路などのアジア市場で中国と競争状態になってしまうことも多いと思います。しかし、一方で私は、日本はADBを主導、中国はAIIBを主導し、日本と中国のチームが一体となって、アジア市場、ヨーロッパ市場に進出、双方がそのノウハウを生かして、その発展に尽くせるはずだといつも考えています。今、それが実現できていないことはとても残念です。
一帯一路は約1,000年前の唐の時代の再興を意識している
――3つ目は「一帯一路」についてうかがいます。この構想は、AIIB以上に、世界を震撼させました。解説をお願いします。
徐 これは中国が500億ドル(約6兆1,000億円)の基金を創設し、陸上と海上のシルクロード周辺地域に、鉄道やパイプライン、通信網などのインフラ整備を行っていく構想です。中国における最大の貿易相手である欧州連合(EU)につながる地域への影響力を強めることになり、中東や中央アジアからの資源輸入の輸送ルートも万全となります。これらは、「中国版マーシャルプラン」とも呼ばれ、中国の豊富な資金力によって、中国主導の広域経済圏が構築されることになります。
「一帯一路」と呼ばれるシルクロード経済圏構想は、陸と海の2つがあり、中国を起点に中央アジアから欧州に至る「シルクロード経済圏(ベルト)」(西安を起点)と中国沿岸部からアラビア半島まで結ぶ海上交通路「21世紀の海のシルクロード」(広州を起点)を指しています。中国がかつて国際経済の中心であった、約1,000年前の唐の時代の再興を意識しています。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
徐 静波(ジョ・セイハ)
政治・経済ジャーナリスト。(株)アジア通信社社長、『中国経済新聞』編集長。中国浙江省生まれ。1992年に来日し、東海大学大学院に留学。2000年にアジア通信社を設立し、翌年『中国経済新聞』を創刊。2009年に、中国ニュースサイト『日本新聞網』を創刊。著書に『株式会社 中華人民共和国』(PHP)、『2023年の中国』など多数。訳書に
『一勝九敗』(柳井正著、北京と台湾で出版)など多数。日本記者クラブ会員。
経団連、日本商工会議所、日本新聞協会等で講演、早稲田大学特別非常勤講師も歴任。関連記事
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