2024年12月23日( 月 )

韓国経済ウオッチ~苦境に陥っている韓国鉄鋼産業(後)

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3日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
 それでは、何が原因で韓国の鉄鋼業界は苦しんでいるのだろうか。韓国の鉄鋼産業を代表するポスコを中心に話をすると、韓国の鉄鋼業界がよく理解できるだろう。

 ポスコの前会長の在任期間は2009~14年である。この期間中に、ポスコは急激に業績が悪化した。09年度は負債比率が38.7%だったのに、14年には88.3%に急激に増えている。営業利益率も09年は10.6%だったのに、14年には4.9%に半分以下に落ち込んでいる。

 前会長は、鉄鋼産業でシェアを増やしていくのは容易ではないことに気づき、事業多角化という名目の下、鉄鋼以外の分野に力を入れた。建設、資源開発、発電事業などである。それによって、36社あった系列会社は、71社に急激に増加した。その事業の多角化は、現在では収益の改善どころか、ポスコの足かせになりつつある。
 このような経営的なミス以外に、現代製鉄の登場も製鉄業界の風向きを変えている。10年に、現代製鉄は高炉2基を建設することによって、年間400万トンの生産能力を持つことになった。ポスコは、そのときまでは国内で独占状態であったのに、現代製鉄が登場することによって、現代自動車という大事な顧客を奪われただけでなく、場合によっては現代製鉄と競合することになったという点である。ポスコがあせって事業多角化の道に走ったのは、もしかしたら現代製鉄が原因の1つだったのかもしれない。

 韓国の鉄鋼産業をこのまま放っておくと、もっと深刻な事態を招きかねないため、韓国政府は構造調整を促している。
 政府はポスコの場合には、多角化をやめて、本業に専念し、経営の質を高めていくことを求めている。去年から会長に就任した権五俊(クォン・オジュン)氏は、系列会社の縮小、整理など、すでに構造調整に着手している。
 一方、現代製鉄の場合には、自動車用の鋼板などに注力することが求められている。現代製鉄も13年の第3高炉の建設を最後に、その後、積極的な投資はしていない。

 ポスコと現代製鉄は、体力はあるが、その他の中堅会社の経営も減収減益が続いて、経営が圧迫し、危機に瀕している。世界経済が回復し、需要が伸びれば別問題であるが、当分の間、需要の伸びは予想できないなかで、中国製の鉄鋼製品は市場に氾濫し、値崩れを起こしている。これから韓国企業は、中国企業がつくれない高付加価値の製品の開発、生産工程の改善によるコスト削減など、早期に対策を講じないと、基幹産業である鉄鋼産業は、根幹が揺れることになりかねない。(了)

 

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