2016年は電力新時代の幕開け(4)
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トイレのないマンション、と揶揄されるが、こういった問題点を抱えたまま、新規制基準に合致した川内原発は再稼働を遂げたのである。ただし、原発を動かす事にはメリットもある。ひとつは運用コストの安さ。2015年4月に経産省が試算したところによると、2030年時点での1kW時あたりの発電コストはそれぞれ、原発10.1円~、石炭12.9円、天然ガス13.4円、石油28.9円~41.6円、水力11.0円、地熱19.2円、風力13.9~21.9円、太陽光(事業用)12.7円~15.5円、太陽光(住宅用)12.5円~16.4円となっている(それぞれ設備の設置費用として資産コスト、燃料のコストなどを勘案して計算されている)。
したがって、ベースロード電源(基礎的に安定的に供給する電源)として原発を用いるほど、安い電力供給を受けることができるのである。電気料金は日本国内産業の生産コストに直結しているため、国際的な価格競争力にも影響を及ぼす。安い電力の供給は、巡り巡って個々人の生活水準に影響を与える物でもあるのだ。
また、エネルギーの選択肢を増やすことで石油など化石燃料への依存度合いを下げるメリットもあると言われている。そもそも原発の日本での普及を後押ししたきっかけはオイルショックにあるとされる。エネルギーの大半を化石燃料に頼れば、その供給が断たれた場合、一気に日本は身動きがとれなくなってしまう。それを避けつつ、また、化石燃料の価格や量の交渉の場でも優位に立つためにの代替エネルギーとして原発が注目され、普及していったのだ。現時点では発電時に二酸化炭素を発生しないということも大きなメリットとして挙げることができる。
原発での問題点は、万が一、過酷事故が発生した場合にはとりかえしのつかない、深刻なダメージを日本国内はもとより、世界中に与えるということ。そして、放射能をもつ廃棄物が生み出され続けるのに、その処理の見通しが定まっていないということ。一方、メリットは発電コストが安い、エネルギーに多様性を持たせることができる、二酸化炭素を発生しないということがある。両者をてんびんにかけ、これからも積極的に議論を戦わせる必要があるのではなかろうか。
(つづく)
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