「エネルギー4.0」の道を阻む、日本が乗り越えるべき障壁とは(3)
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NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長 飯田 哲也 氏
日本の再生可能エネルギーは太陽光発電、それも「メガソーラー」一色という感があるが、世界では太陽光発電以外の再生可能エネルギーもバランス良く普及させている。その先端を行くデンマークとコラボして、地域で電力会社を持つ「分散型エネルギー」が進め、エネルギーの「地産地所有」を日本で実現させようとしている。その中心人物であるISEPの飯田哲也氏に、日本のエネルギーの現状と課題について話を聞いた。
財務省を回避できる送電料金の利権
――既存の電力会社は、FIT見直しの動きをどう感じているのでしょうか。
飯田 日本では「送配電事業者が既存の電力会社から完全に独立していない」という問題があります。ドイツやスペインなどは独立していますが、日本の場合は2020年からの発送電分離後でさえ明らかに電力会社の枠内となる持株会社方式です。
そもそも、2014年の九州電力ショックから始まり、指定電気事業者制度で事実上の買取抑制がまかり通っています。新電力会社(PPS)のシェアが6%まで増え、電力会社のシェアが落ちている。さらに少子高齢化で需要が伸びないのに省エネが進み、電力会社離れと再エネ普及で電力会社の売上が落ちています。
原発再稼働がなかなか進まず、電力会社にとっては踏んだり蹴ったりの状況で、ドイツの事例などを見ていて「自分たちは大丈夫か。PPSや再エネが小さいうちに潰してしまいたい」という電力会社の思惑が透けてみます。
こうした状況を踏まえ、再エネ抑制したい人たちの思惑通りに、満を持して再エネ法改正のほうに向かっています。小売電気事業者に再エネを売るなどの新しい市場を作り出したくないと考えている、と勘ぐらざるを得ません。
経産省は、そんな電力会社を全体的にコントロールしたいのが本音でしょう。再エネが多少増えるのはいいが、自分たちの目端の利く範囲で、大規模事業者が手がける洋上風力やメガソーラーを増やしたい一方で、細かい再エネ発電所が増えるのは面倒だと思っているのかもしれません。――経産省としては、電力会社を配下に置き、電力市場全体を自分自身が全体をコントロールしたいということですね。
飯田 それは通産省時代からの彼らの悲願で、ようやく半歩進んだと言えるのでしょう。欧米型とは違う、国家管理的な電力自由化なのです。そのため、わたしは日本のエネルギー政策の段階が「エネルギー1.5にある」と表現しました。
「電力取引監視等委員会」もできましたが、これは経産省のブランチで、いわゆる公平性というよりは経産省の手の平で電気事業をコントロールするための機関です。
なぜ、ここまで経産省は電力にこだわるのか。一つには、電気料金や送電料金が経産省にとって財務省と交渉しなくてもよい、事実上の徴税ツールだからです。彼らとしては、電源三法交付金(これはまだ特別会計の税だったが)を皮切りに、高レベル廃棄物処理の負担金や再処理、廃炉積立金や福島の事故処理費用など、霞が関力学では最も強敵の財務省や国会の面倒な質疑を回避しながら、自分の手のなかで「政策予算」をデザインできます。この利権は絶対に手放したくないはずです。(つづく)
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