2024年11月23日( 土 )

2016年最大の課題、隣国・中国は環境問題を解決できるのか(2)

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参議院議員 浜田 和幸 氏

健康被害が蔓延、国境を超える環境汚染

sora 全土が大気の汚染、水源地の枯渇、土壌の汚染に飲み込まれたと言っても過言ではない。とくに冬場には石炭ストーブによるばい煙や石炭火力発電所から排出される公害は隠しようがない。悪名高いPM2.5による健康被害は国境を飛び越え、我が国はもとより、遠くアメリカにまでおよんでいるほどだ。

 最新の中国社会科学院の調査によれば、「河川の43%の水は汚染がひどく飲み水としては不適格」とのこと。また、中国の政府機関である環境保護局曰く、「都市部の地下水の57%も同様に飲料に適さない」。

 よって、住環境のみならず、食料生産の面においても、安全性が問われる事態になってしまった。国民の間にも、環境汚染がもたらす健康被害が蔓延し、不信と怒りの声が巻き起こり、政府に対する抗議行動が各地で年間20万件近く発生するようになっている。北京だけで年間100万人もの奇形児が生まれているという。環境汚染による悲劇に他ならない。

 環境汚染は国内農業にも悪影響をおよぼし、かつては食料の輸出国であった中国が今では世界最大級の食料輸入国になってしまった。そのため爆食中国は世界の食糧生産に影響をおよぼしている。と同時に、食糧の生産や人間の生存に欠かせない「水」が枯渇し始めていることも深刻だ。16年には世界各地で中国発の食と水をめぐる争奪戦が過熱する可能性が高い。

 さて、こうした急激な環境問題の深刻化をもたらした原因は複雑極まりない。経済発展にともなうエネルギー、とくに石炭の大量消費もあれば、硫黄分の含有量が多い燃料の使用、工場や自動車から排出される公害への防止策の遅れなどが複合的に絡まっている。もちろん、これまで中国政府はさまざまな法律や制度を講じ、対策に乗り出してはいるものの、事態は悪化する一方である。

 さらには、周辺国にも深刻な環境汚染をもたらし、国際的な問題にもなり始めている。たとえば、我が国においてもPM2.5に限らず、中国から飛来する黄砂、酸性降下物、水銀など、さまざまな汚染物質が押し寄せており、日中間の政府間交渉の場において、常に避けて通れない課題となっている。

 国連環境計画(UNEP)によると、「金の精錬や石炭の燃焼といった産業活動により、大気中に排出される水銀は全世界で1,960トンに達する。中国はこのうち、何と3分の1を占めている」。我が国では水俣病を教訓に、国内での水銀利用は厳しく制限されている。しかし、中国や発展途上国においては、今でも環境対策が不十分なまま広範な使用が続いている。

 我が国の環境省によれば「中国を中心に、途上国での水銀使用を減らすことが重要だ。水俣条約で国際的な規制はかかるが、観測を通じてデータを集め、効果的な対策に活かす必要がある」。残念ながら、こうした国際的な取り組みに対して中国は積極的な対応を示していない。そのため中国は、国際社会から「いまだに経済発展を優先するあまり、環境対策はなおざりにされている」と厳しい批判を受けている。炭鉱の崩落事故や危険な化学薬品の保管体制の不備も問題だが、基本的には同根で、人命や自然環境に対する軽視が元凶と思われる。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

 
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