LIXILグループを追われる「プロ経営者」藤森義明社長の大失敗(前)
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(株)LIXILグループは、年が押し詰まった2015年12月21日、藤森義明社長兼最高経営責任者(CEO)が16年6月の定時株主総会で相談役に退くと発表した。後任の社長兼CEOには、工具通販大手(株)MonotaRO(モノタロウ)の瀬戸欣也会長(55)を迎える。藤森氏は米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身の「プロ経営者」として注目されたが、海外企業のM&A(合併・買収)で思わぬ落とし穴にはまって、去ることになった。
異様な社長交代の会見
日本経済新聞電子版(12月21日付)は、(株)LIXILグループの異様な社長交代会見を報じた。
〈(12月)21日に東京都内で開いた記者会見は社長交代会見として異例だった。後継者の瀬戸氏は出席せず藤森氏1人で記者会見に対応したのだ。瀬戸氏は海外にいるとみられ、急ごしらえの印象は強い。
会見でも「退任は唐突すぎるのでは」といった質問が飛んだが、藤森氏は「会社を大きくしてきた自負がある。5年を1つの区切りと考えていた」とかねて退任を検討していたと話した。子会社化した独グローエ傘下のジョウユウの不正会計問題について、進退とは「全く関係ない」と断言した〉藤森氏はLIXILの前身の1つ、トステム(旧トーヨーサッシ)創業家の潮田洋一郎氏(62)に請われて2011年8月社長に就任した。トステムとINAX、新日本軽金属、サンウェーブ、東洋エクステリアの5社が合併してLlXILが誕生した4カ月後のことだ。
さっそくGE流のグローバル化や事業の「選択と集中」で、手腕を発揮する。「水回り」事業に注力。米衛生陶器のアメリカンスタンダードや独水栓金具のグローエなどを買収。就任時3%にすぎなかった海外売上高比率を、3分の1近くまで拡大した。だが、傘下に組み入れた中国企業ジョウユウの破産で、巨額の損失を抱えた。藤森氏は「辞任とは関係ない」と否定したが、更迭に追い込まれたのはジョウユウ問題であった。
海外企業の買収でババをつかむ
藤森義明氏が墓穴を掘ったのは、中国で水栓金具や衛生陶器の製造・販売行うジョウユウを子会社にしたことだ。LIXILは、ジョウユウを直接買収したわけではない。LIXILは14年1月、浴室やキッチンの水洗金具で欧州最大手の独グローエを日本政策投資銀行と共同で買収した。買収額は4,109億円と巨額なものだ。これにともない、グローエの子会社だったジョウユウも一緒に傘下に入ったのだ。
ジョウユウの母体企業である中宇衛浴は、創業者の蔡建設が1979年に設立した衛生陶器や水栓金具のメーカー。資金調達を目的に、欧州市場での株式公開を計画。08年にドイツにジョウユウを設立して、フランクフルト証券取引所に上場。グローエは13年3月、蔡一族が保有するジョウユウ株との株式交換で、ジョウユウを子会社化した。LIXILは15年4月1日、グローエの株式を買い増して連結子会社に組み入れた。グローエの子会社ジョウユウもLIXILの連結子会社となった。この直後にジョウユウの不正会計処理と巨額な簿外債務が発覚。大幅な債務超過に陥ったジョウユウは5月22日、破産手続きをドイツの裁判所に申し立てた。
中国子会社の破産を受けて、LIXILは最大662億円の損失が生じた。LIXILはなぜ、そんなに巨額な損失が出たのか。ジョウユウとの関わりや、その実態について口を閉ざした。(つづく)
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