2016年最大の課題、隣国・中国は環境問題を解決できるのか(3)
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参議院議員 浜田 和幸 氏
中国全土を覆うPM2.5、交通インフラにも影響
中国を発生源とする環境汚染は、水銀公害に止まらない。このところ、我が国をはじめ世界の注目を集めているのがPM2.5だ。大気汚染の原因の1つである、粒子状物質(PM)は猛烈な勢いで中国全土を覆い始めている。PMは口、鼻から気管支を通じ、肺胞や血管に運ばれ、肺の奥まで入り込む。そのなかでもPM2.5は喘息、気管支炎、肺がん、循環器系疾患による死亡リスクを高めるなど、健康への影響が大きいと指摘されている。
とくに、肺や心臓に疾患のある者や、子どもや高齢者などはより多くの健康被害を受ける可能性が高いと目される。北京の病院では呼吸器系疾患や循環器系血管疾病の患者の来院が急増し、この大気汚染による体調不良を訴える人々が蔓延するようになった。筆者が15年10月の国慶節に合わせて北京を訪ねた折も、天安門広場は大気汚染でかすんでおり、数10メートル先もはっきり見えない状態であった。
さらなる問題として、視界不良により交通事故が多数発生するようになり、時には主要高速道路の閉鎖や、北京首都空港での欠航や閉鎖まで頻発するようになった。こうした大気汚染が引き起こす経済的な損失は中国経済の将来に暗雲を投げかけ始めている。
事態は北京に止まらず、河北省、河南省、山東省、江蘇省、安徽省、陝西省、四川省など、中国各地に広がりを見せている。道路の閉鎖に止まらず、学校の閉鎖もよく聞くようになった。すでに中国の国土面積の7分の1以上、言い換えれば、日本の面積の3.5倍以上におよぶ地域が、大気汚染に覆われたことになる。
環境保護局の責任者は中国が直面する大気汚染の原因について、「表面的には気象条件によるものであるが、実際は中国の急速な工業化、都市化の過程において、累積した環境問題が表面化したものだ」と説明している。調べて見ると、北京周辺(天津、河北省を含む)、長江デルタ地帯、珠江デルタ地帯の3つの地域は、中国の国土面積の8%を占めるに過ぎないものの、全国の石炭使用の42%、ガソリンおよびディーゼルの52%を消費していることが判明した。これらの産業拠点では、鉄鋼の55%、セメントの40%を生産している。全国で排出されるSO2(二酸化硫黄)とNOX(窒素酸化物)、オキシダントの30%以上を排出しており、一定面積当たりの汚染物質排出量は他の地域の5倍以上に達する。
その結果、上記の3地域では、近年毎年100日以上、都市によっては200日以上にわたり煙霧が発生していると報告されている。こうした地域に住み、働く人々が健康を害するのも当然であろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。関連キーワード
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