LIXILグループを追われる「プロ経営者」藤森義明社長の大失敗(後)
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会員制情報誌『FACTA』が暴いた中国子会社の闇
会員制情報誌『FACTA』が連載した「怪しすぎるLIXIL『丸損』」(2015年8月号)と「LIXIL陥れた中国『魔窟』」(15年9月号)の告発記事で、ジョウユウの母体企業である中宇衛浴の実体が暴かれた。仰天するような話が次々と飛び出してくる。
ジョウユウが破産を申し立てた翌日の5月23日、中宇の中国語のウェブサイトに、次のような声明文が載ったという。〈ドイツと中国では法律が異なり、ジョウユウの法的整理は中宇衛浴の経営に直接の影響は及ばさない。中宇衛浴の全管理職は職務を継続し、正常な生産および営業活動を維持している〉
ジョウユウの実体である中宇には、蔡親子が経営トップとして居座り、ドイツの管財人による資産保全は、ドイツと中国は法律が違うと無視した。さらに7月17日、中宇は「地元政府と銀行の支持の下、投資家から3億元(約60億円)の運転資金を調達する契約を結んだ」とウェブサイトで発表した。ジョウユウと中宇とは一体のはずだが、持ち株会社はドイツで法的整理を進めるが、中国の事業子会社は私的整理で再生するという奇妙奇天烈なことが進行しているのである。
企業会計が通用しない世界
中国で現地取材した『FACTA』によれば、中宇が本拠地としている福建省の地域では、家族と会社、自社と他社、政府と企業などの区別があいまいで、帳簿の改ざんは日常茶飯事。土着性が極めて強く、地縁による強い連帯感で結ばれ、資金調達で相互に債務保証して助け合ってきた。先進国の企業会計の常識が通じない世界だという。そんな地縁社会の相互扶助企業なんか、絶対に買ってはいけなかった。
それなのにLIXILは買収に踏み切り、あまつさえ香港の子会社に330億円の債務保証をしていた。最大のミステリーだ。同誌は、グローエ株を保有する米投資会社はグローエを第三者に売却する場合は、必ず同意を得るという協定を蔡一族と結んでいたことをスッパ抜いた。〈LIXILは蔡一族が首を縦に振らなければグローエを買収できない立場だった。それに焦って目が曇り、ジョウユウという「毒饅頭」を喰った可能性が高い〉と結論づけた。
創業家の御曹司がプロ経営者を更迭
LIXILは11月16日、ジョウユウ問題の社内調査を公表した。しかし、明らかにされたのは700字余りの概要のみで、調査報告書は開示しなかった。同時に公表した役員の処分は、役員報酬の減額3カ月分という大甘なものだ。これでジョウユウ問題の幕引きを図るつもりだ。だが、巨額な損失事件に蓋をしたことに、上場会社のガバナンスの体を成していないとの非難を浴びた。藤森氏は辞めるつもりはさらさらなかったが、取締役会議長で指名委員会委員の潮田洋一郎氏が断を下した。創業家の御曹司が自ら招聘した「プロ経営者」の首を切った。社長交代の発表会見に、後任社長が出席しないのは前代未聞の珍事は、直前に更迭が決まったことを物語っている。
(了)
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