ブラック批判に降参した「ワタミ」の渡邉美樹氏(後)
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ブラック批判が経営に影響
居酒屋や介護など客商売を主力にしてきたワタミにとって、ブラック企業という批判は経営の重石になってきた。2015年9月中間期連結決算は、売上高が10.3%減の696億円、最終損益は20億円の赤字だった。
和民など居酒屋チェーン店舗は、この2年で全体の3割近い160店舗の閉鎖に追い込まれた。画一的なメニューを嫌う客が離れ、さらにブラック企業批判も拍車をかけた。中間期の国内外食のセグメント利益は15億円の赤字だ。
稼ぎ頭だった介護子会社ワタミの介護(株)を15年10月、損保ジャパン日本興亜ホールディングス(株)(SOMPO)に210億円で売却した。93%あった有料老人ホームの入居率は78%まで落ち込んだ。それでも中間期の介護事業のセグメント利益は3.9億円の黒字。
介護事業と宅食事業(セグメント利益は5.7億円の黒字)は黒字を出したが、国内外食事業の赤字を吸収できなかった。ブラック批判の影響が出た。ワタミの介護の売却により、16年3月期の業績予想を下方修正した。売上高は当初予想より218億円減額し1,270億円(15年3月期1,553億円)、営業利益は13億円減額の13億円の赤字(同20億円)の赤字、最終損益は120億円増額の130億円の黒字(同128億円の赤字)に転換する見通しだ。
稼ぎ頭の介護事業を売却したワケ
ワタミが稼ぎ頭の介護事業の売却に追い込まれたのは、主力銀行の横浜銀行が自己資本比率の低下を問題視したからだ。12年3月期に25.4%あった自己資本比率は、15年3月期には7.3%と10%を割り、さらに15年9月中間期には5.9%にまで落ちた。債務超過に転落するのは時間の問題だ。
自己資本比率が大きく落ち込んだのは、負債が増大したため。外食事業は次々と閉鎖したが、次の成長の柱に据えた介護事業は有料老人ホームの建設に積極的に投資してきたことによる。自己資本比率を改善するには、大きく膨れた介護事業の借入金を削減しなければならない。銀行は介護事業向け融資をSOMPOに移し替えることで保全ができる。介護事業の売却で、自己資本比率を30%近くにまで持ち直す。これが稼ぎ頭の介護事業を売却した理由だ。これで、当面の経営危機は切り抜けた。
しかし、赤字を垂らし流し続ける外食事業をどうやって立て直すのか。一度、染み付いた「ブラック」のイメージをぬぐうのは、簡単ではない。
再生には身売りしかない
創業者でオーナーの渡邊美樹氏は、『週刊東洋経済』(15年11月28日号)のインタビューで「ワタミに戻ることは1,000%ない」と言明した。「もともと教育が僕のライフワークだから、そちらに力を入れていく」と語る。渡邉氏はブラック批判に白旗を掲げて経営の表舞台から去る。ワタミが再生するには身売りするしかない、というのが外食アナリストたちの一致した見方だ。
ワタミの筆頭株主は、発行済み株式の25.0%を保有する渡邊家の資産管理会社、(有)アレーテー。すでに銀行に担保に提供されている。渡邉氏と銀行の合意で、アレーテーが保有するワタミの株式が売却される可能性が、極めて高い。
(了)
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