韓国経済ウォッチ~遅れている韓国の金融産業(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国の金融産業の後進性を克服するために、2つの議論がある。
1つは、IT技術を活用したフィンテックで成功事例をつくって、遅れを取り戻そうという議論である。韓国はITが発達しているので、その可能性は十分ある。
しかし、実際は金融産業のいろいろな規制に縛られて、フィンテックはなかなか思うように進んでいないのが現状である。もう1つは、金融機関のメガバンク化である。韓国の金融機関は規模が小さくて世界的に競争にならないので、規模を大きくする必要があると議論である。そのような方向性で金融機関同士の吸収合併などが起こり、すでに4つの金融グループに再編されている。
しかし、よく考えてみると、これも変な理屈であることがすぐわかる。規模が小さく競争力がないというより、競争力がないので規模が大きくならないのではないだろうか。体重だけ増やしても立派な重量上げの選手にならないように、規模よりも、国際競争のなかで鍛えられて力を養うことが大事である。競争力のないなかで規模だけを大きくすると、何か問題が起こった際には、国民経済に大打撃を与えかねない。すなわち、競争力のともなわない規模の大型化は、大きな災難になる恐れがある。
世界ランク10位以内に数行も入っていた日本の銀行が、不良債権問題で日本の経済に停滞をもたらしたことは、いい事例であろう。それでは、韓国の金融機関が遅れるようになった原因は、何だろうか――。
1つ目は、厳しい新規参入規制である。銀行の場合、1983年以降で新規設立が1件もない。信用組合なども同じ状況である。20年以上も新規参入が1件もないということは、先進国では珍しいことである。このような新規参入がないということは、激しい競争が存在しないことを意味する。韓国の銀行は激しい競争をしているように見えているだけで、実はキャリアと同じで、他社と似たような商品で商売してもビジネスが成り立つため、そこに健全な成長は期待できない。
2つ目に、信用協同組合などに対する政策失敗と差別で、庶民の金融機関が萎縮している。政府は信用協同組合に対して取り扱い業務の制限、支店設置の制限などいろいろな差別政策を取っている。その結果、信用協同組合は本来の機能である庶民に対する貸し出しなどの機能を十分果たしていない。
3つ目は、韓国の金融監督機関の問題である。韓国には金融を監督する機関が2つある。重要で政策的な決定をする「金融委員会」と実務的な業務をこなす「金融監督院」である。問題は、この2つの機関が利権をめぐって対立することも多く、専門性にも欠如していて、金融産業の発展よりも利権を優先するケースが多いことだ。
4つ目に、規制の不透明性と恣意性である。韓国の金融産業には規制が多く、その規制自体も不透明で、予測が難しいと言われている。
このように韓国の金融産業は、内部要因によって遅れている。韓国経済が成長するためには、このような問題の解決と変革が必要である。金融は産業を支える大事なインフラになるので、金融産業の発展は韓国経済の発展に欠かせない要素である。
(了)
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