九大・箱崎キャンパス跡地に描く、都市未来図(前)
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(株)シェルフアソシエイツ 代表取締役 坂口 敬司 氏
現在、順次移転が進んでいる九州大学・箱崎キャンパス。福岡市街地における42.6haという広大な跡地の利用をめぐって、民間事業者の注目が集まっている。空間をプロデュースし、そのブランディングを行うプロである(株)シェルフアソシエイツ代表取締役の坂口敬司氏に、箱崎キャンパス跡地における再開発はどのような方向で進んでいくのが望ましいのか、話を聞いた。
――九州大学の箱崎キャンパス跡地の再開発が、今後の福岡における都市づくりでは重要な位置づけを占めるとして注目を集めています。坂口さんのお考えを、自由な視点からお聞かせください。
坂口敬司氏(以下、坂口) 私のイメージとしては、やはり箱崎キャンパス跡地には単なるマンションとか商業施設のハコモノが来るというよりも、やはり福岡なら特性の1つ、つまりコンテンツを集積させることが大事ではないかと思っています。コンテンツ主導型の、たとえばベンチャーを入れたり、もしくは特区にしてアジアの優秀な企業をどんどん誘致するといったような、高度成長期以降の日本で行われてきた従来型の面開発ではない都市開発を行ったほうがいいと思います。あとは継続した集客力ある“磁場”のような魅力をどうつくるかでしょう。たとえば今、マリンメッセが手狭になってきていますが、コンベンション施設を考えてみるのもいいでしょう。
ほかに福岡の良いところとして、ご存じの通り、大学や短大、専門学校などの学校がたくさんあることが挙げられます。福岡都市圏でみると相当数の学生がいますから、都市特性として若者の流動性と言うか、若手の活力がある特徴持った都市ですね。なので、若手が集うことで街が活性化できるような…、思い切って現在の箱崎の街のイメージそのものを変えてしまうというようなやり方もありますし、箱崎キャンパス跡地再開発は、そうした可能性やインパクトを秘めていると思います。――もともと1911年に九州大学が箱崎の地で創立されて以降は、言うなればずっと若者の街だったわけですから、そういったイメージを受け継ぐようなコンテンツなり、街づくりなりが、ふさわしいように思います。
坂口 地区の履歴や文脈として、九州大学がこの場にあったことをどう次世代にメッセージを送るか…そのような視点も極めて大事だと思います。そのためにはやはり、魅力がないとダメですよね。本当に知恵次第だと思います。
土地を切り売りしてコンペにかけて、「ここは○○ゾーンだからA社」「ここは△△ゾーンだからB社」、そして「ここはマンションを建てます」「商業施設をつくります」――というようなやり方を箱崎キャンパス再開発でもやってしまったら最悪だと思います。もっと別の再開発手法で、強力なコンセプトリーダーのもとに志ある個人や企業など有志持った人が集い、街全体のグランドデザインをきっちりと描いていくことが重要です。コンテンツというくくりで考えるならば、博物館、ミュージアムとか、そういう文化的な要素を入れてみるのはどうでしょうか。今でも福岡市には福岡市美術館とか博物館とかありますが、そうしたお役所的なものではなく、もっと民間主導のもの。そういうものがあったらいいですね。
たとえば、パリに「ラ・ヴィレット公園」というのがあります。そこは、元々は屠殺場だった場所なのですが、ミッテラン大統領の時代に再開発が進んだようで、オムニマックスのドームシアターや運河、音楽ホール(シテ・ドウ・ラ・ミュージック)入れたりなどして、すごく活性化に成功した事例です。
そうした国内外の成功事例を踏まえて、箱崎キャンパス跡地の再開発のコンセプトを立てるとすれば、「福岡箱崎メディアミュージアム・シティ」あるいは「福岡箱崎メディアミュージアム・パーク」というのも面白いかもしれません。ミュージアムというのは定義が広くて、一般のミュージアムとか博物館も当然ミュージアムですけれど、そこに人が参加するとか、そういうものもミュージアム的にとらえられると思います。韓国や台湾、中国各都市、シンガポール、ベトナムなどの主要都市とコンテンツや人的なネットワーク網がしくみとして整備され、交流や循環がなされる日本最先端の街・箱崎…すごくエキサイテイングだと思いませんか。技術とかシステムというのは、なくてはならないもので、都市の基盤だとの認識は当然あるのですが、それらはユーザーの豊かな生活、あるいは便利で安心な生活実現のために下支えするものであるのですね。これから未来に向けて創造するクリエイテイブな街づくりの主役は人の街に対する親しみや愛着だったり、感動とかコンテンツをいかに実現するか。ハードもソフトもどちらも大切ですが、グランドデザインづくりには、従来型のハードウェア主導ではなく、ソフトウェア主導で、ぜひやってほしいですね。
――もともと九大の学生が通っていて、ある種あの場所で文化が醸成されてきたような側面もありますから、おっしゃったようなミュージアムなどの文化的な施設というのは、ふさわしいのではないかと思います。また、あそこにはまだ歴史的な建造物とかが残されていますので、そういったものの活用も考慮していかなければなりません。
坂口 九州大学箱崎キャンパス内に残っている建物は、結構価値の高い建築が多いと思います。当時の建築は、コンクリートもすごく良い砂や骨材を使っていたり、しっかりとできているんですよね。そうして、遺されている古いものを保存しつつ、そこにいかに新しいものを融合していくか――。そういったことも、箱崎キャンパスのあの土地であれば、まだ今から可能です。
(つづく)
【坂田 憲治】<COMPANY INFORMATION>
(株)シェルフアソシエイツ
代 表:坂口 敬司
所在地:福岡市中央区赤坂1-14-22 センチュリー赤坂門ビル4F
設 立:2010年5月
資本金:950万円
TEL:092-714-7001
FAX:092-714-7002法人名
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