2016年国際政治展望~公式声明・報道の裏側(中)
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国際政治経済学者・参議院議員 浜田和幸氏
自分の国もいつ、アメリカから何をされるか分からない
――前回のお話は、全てが「目からうろこ」でした。特にアメリカが、「今後30年間で核兵器開発に1兆ドル計上した」という事実には驚愕しました。
浜田 国際政治と言うのは、公式声明・報道の裏側を読み解かなければなりません。北朝鮮の金正恩最高指導者からすると、イラクのフセイン大統領や現在のアフガニスタンの状況を見ていると、「自分の国も、いつ何時、アメリカから何をされるかわからない」と考える、怯えるのは、しごく当然のことなのです。それが「自衛的措置である」という公式声明になっています。
北朝鮮はアメリカやロシアや中国はもちろん、日本の安倍政権に対しても「憲法の修正、改正を通して、自前の核を持つ方向に向かっている」という見方をし、牽制しています。
さらに、今回の水爆実験成功で、早速、イランに水爆の売却交渉を進めています。世界には、複数の途上国がひそかに結びつき、ミサイル技術、核物質の遠心分離機など色々な資源を交換する闇市場が存在します。「自分達の持っている核で人類を道連れにせよ」と遺言
以上のようなことをしっかり踏まえた上で、ではどうやって、世界を平和に導いていくのかを、政治家は正しく判断しなければなりません。原爆でも水爆でも、一度、投下されれば、人類の滅亡につながるからです。
故金正日北朝鮮最高指導者は、「万が一、北朝鮮がアメリカから攻撃を受けた場合、自分たちの持っている核で人類を道連れにせよ」という遺言を残しています。この「窮鼠猫を噛む」とでも言うべきシナリオは、現実にあり得ることです。そのことをしっかり認識した上で、どう暴走を食い止めるかを検討しなくてはいけません。日本人の一員として暮らしている中国人の数が100万人
――少し話を転じます。「一衣帯水」である隣国、中国との関係については、どのようにご覧になりますか。
浜田 今、政治だけを考えると日中は戦後最悪とも言える冷え込み状態です。ただし、私は基本的には、世界第2位と第3位の経済力を誇る中国と日本が、どのように共存共栄の道を歩むことができるのか。これこそが、まさに日本にとっての「2016年の最大の課題」であると考えています。
今日はこちらに来る前に「日中独身男女の新春お見合い大会」に出席していました。昨年あたりから、爆買いする富裕層を中心とした中国からの観光客が飛躍的に増え、その数は500万人に達しようとしています。しかし、このような短期間の観光客ではなく、永住権を取得または日本国籍を取得し、日本人の一員として暮らしている中国人の数も100万人に達しようとしています。そして、その男女比率は、一人っ子政策の影響で圧倒的に男が多い中国本土と全く逆で、圧倒的に女性が多くなっています。
そこで、中国人同士ではなく、日本人と中国人のお見合いを演出する動き(結婚相談室)が20年前から始まりました。今回は、日中関連経済団体、中国大使館などの後援で、その催しがさらにレベルアップして行われたのです。六本木に男女約300人が集合、多数の報道取材もあり大変な賑わいでした。この催しは大成功だったので、今後も定期的に開催することになっています。
民間で「共生社会のフレームづくり」が動き始めている
なぜ、このような話をするかと言いますと、2016年は「共生社会のフレームづくり」が重要になる、動き始める年になると考えているからです。
近ごろ読んだ日経新聞の社説にも、「日本が経済成長を遂げるには、外国とどう向き合うのかが重要になってくる。日本市場で人口がどんどん縮小する中で、日本にやって来ている外国の人達を受け入れていく、彼らと共生していく社会を目指さないと日本の今後の発展、成長は難しい」というような内容が書かれておりました。私も同感です。また、その社説には「日本各地のコミュニティで外国人が増え、日本人を外国人が上回るコミュニティも出現している」とありました。以前はゴミの出し方などで発生していたもめ事、トラブルもしだいに解消され、徐々に共生社会のフレームワークができてきているようです。
過去の戦争でどんな経緯があったにせよ、割り切って
――日中間の関係改善は、「2016年の最大の政治課題」の1つですね。政治的には現在、何が一番欠けていると思われていますか。
浜田 国際政治や外交交渉において最も重要なのは「人と人との信頼関係」です。中国には日本企業が2万社以上進出しており、そこで働く中国人は2千万人を超えています。彼らは、日本のものが素晴らしい、安心、安全であることを認識しているから、日本の企業で働き続けているわけです。また、彼らは、日本企業で働くことによって、日本人の持っている価値観、自然に対峙する姿勢、家族主義的なことなど、どんどん新しい発見をしています。
中国人の多くは、過去の戦争でどんな経緯があったにせよ、ある意味で割り切って、富裕層も若者も自分たちの国の発展のために日本と友好関係を保っていくことが重要であることを理解するようになってきています。それらが情報ベースとなって、500万人も中国人観光客が日本を訪れるのです。留学生の数も技能実習生の数も、外国人の中で中国人が多いのは、このような背景があります。(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員を歴任。参議院では、外交防衛、経済産業、内閣の各委員会に所属し、ODA特別委員会や憲法調査会でも主導的な役割を果たしている。関連キーワード
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