韓国経済ウォッチ~韓国経済の綱渡り(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
2013年の韓国の輸出入の合計は、対中国が2,288億ドルで、対米国が1,036億ドル、対EUが1,100億ドル、対日本が947億ドルである。米国と日本を合わせても、中国にはおよばない状況である。現在でも韓国輸出の26%を中国が占めているが、中韓FTAが締結されたことによって、より一層貿易拡大が予想される。
FTAは二国間で交わされる自由貿易協定で、FTAによって関税が撤廃されたり、税率が下がったりするので、貿易は拡大する。その影響を消費者と製造業に分けて考えてみよう。消費者の場合は、質のいいものをもっと安い価格で買える選択の幅が広がることになる。韓国は製造業が中国より競争力があり、質のいい製品を作っている。製造業でも両国で激しい競争が起こり、競争力のない企業は淘汰される。
すなわちFTAは、構造調整の効果をもたらす。それは言い換えれば今でも厳しい零細業者にとって試練を意味する。一方、中国は、農業は韓国よりも強く競争力がある。中国の安い農産物が入ると、韓国の農家はダメージを受ける可能性が高い。韓国農家としては、一般農業よりも中国でやっていない高付加価値の農業に切り替えざるを得ない。
消費者にとって、自由貿易協定は質のいい製品をもっと安く購入する機会を与える。製造業者の場合には短期的には競争が激しくなって大変なことになる。しかし、激しい競争は、構造調整の効果をもたらし、長期的には産業の発展をもたらす。すでに中国企業は莫大な資金を武器に韓国の優秀な中小企業に投資をしている。製造技術を吸収したいという側面もあれば、ある会社では韓国のブランドを利用して自国を攻略したいなど意図はさまざまだ。
ところが、このような統計上の数字の増加とは裏腹に、現実的に中国ビジネスで確実に成果を出しているところは残念ながらそれほど多くはない。最初はいい条件であると思ってスタートしたビジネスだが、条件が変えられておかしくなり、投資したものを全部取り上げられたというような話も多い。最近は、中国の人件費が上昇しており、過剰生産が大きな問題になって、中国経済は失速している。
今回、中国とはFTAを結ぶことによって中国からの輸入は価格が安くなった反面、日本からの輸入は価格がそのままなので、部品などの供給も中国の工場などにシフトする可能性が高い。そうすると、安い部品が市場に氾濫し、製品の品質が落ちてくる恐れもある。
今でも、そのような現象が起こっているが、安いものだけが選ばれ、いいものが開発されても市場で占める地位を段々と失っていく、嘆かわしい現象がおこらないとも限らない。韓国は、このような状況のなかで、中国と関係を深めながらも、綱渡りのような危うい状況が続けていくだろう。(了)
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