2024年11月24日( 日 )

マルイとはこんな店だ!~その全貌と戦略を探る(1)

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博多マルイ オープン直前企画

 4月21日に開業する「博多マルイ」のテナント概要が発表された。商業施設は進出の度にテナントの顔ぶれで「九州初上陸」「福岡初進出」という冠に注目が集まる。しかし、企業そのものが新参のマルイは戦略、戦術ともこれまでの施設とはだいぶ異なる。その全貌とポイントを見ながら、福岡への影響度を探る。

急成長も改革もクレジット事業から

東京中野にあった昭和30年代の丸井本店<

東京中野にあった昭和30年代の丸井本店

 マルイとは一体どんな企業なのか。また、店舗はどんな業態に属すのか。九州では馴染みがないだけにご存じない方は少なくないと思われる。
 進学や就職で関東圏に住まれた方からすれば、若者を対象にクレジットでファッション衣料を販売する百貨店というイメージだろうか。確かにビジネス検定の教科書では一時期まで、マルイは「百貨店業態」というカテゴリーに入っていた。
 それが今では、定期借家契約によるテナント集積の「ショッピングセンター」(郊外型ではなく、都市型の商業ビル)に転換している。なぜ、戦略を変えたのか。それを説明するために、まずマルイの沿革から見てみよう。

 マルイ(正式な商号は丸井グループで、持株会社)は、1931年、現グループ会社社長青井浩氏の祖父、青井忠治氏が月賦販売の丸二商会から暖簾分けで独立。東京中野区の桃園町で店舗を創業したことに始まる。
 当時は家具を月賦、いわゆる分割払いにした割賦販売を主力とし、それを軌道に乗せると35年には阿佐ヶ谷店を開店。同年、商号を丸二の丸に青井の井を合わせた「丸井」に改め、翌36年にはその後本拠となる中野に本店を構えた。

 マルイを知る多くは「クレジットの丸井」を思いつく。現在の小売りとカードを一体にしたビジネスは、この時の割賦販売を下敷きに今日まで受け継がれてきたのである。
 その後、青井忠治氏は割賦販売における与信や情報整備など近代化に取り組み、60年日本で初めてクレジットという言葉を付けたカードを発行した。
 そして1981年には、忠治氏から経営を引き継いだ忠雄氏がクレジットのノウハウを生かしたキャッシング(小口消費者ローン)を開始した。

ファッション&クレジットモデルの崩壊

 マルイはバブル経済の追い風を得て、80年代半ばまでは若者向けファッション(デザイナーズブランド)とクレジットの両輪による百貨店事業にまい進し、急成長をとげた。90年には30期連続の増収増益を達成し、売上げ規模6000億円を誇った。まさに百貨店のみならず小売業界で、独自のポジションを確立したのである。

 ところが、バブルが崩壊すると一転構造的不況に襲われる。それまで主力とした若者向けファッションは凋落。価格の安いカジュアル衣料が市場の中心を占めるようになった。
 高額なファッション消費が減少する環境変化において、クレジット販売をシンクロさせるマルイのビジネスは通用しなくなったのである。
 売上げも96年までは下降線をたどり、97年から3期連続で増収に転じたが、2000年には再び減収。ピーク時の6000億円に及ばない長い停滞期を迎えた。

 2005年、青井忠雄社長から経営を引き継いだ浩氏は、早速ビジネスモデルの再構築に取りかかる。最も力を入れたのがクレジットカード事業の改革だ。当時は長引く不況でカード破産者が急増し、貸金業法が07年以降に改正されることになっていた。
 浩社長はカード事業の中でもキャッシングの先行き不透明を見逃さず、06年にマルイの顔となっていた「赤いカード」を改め、VISAと提携した「エポスカード」を発行した。 
 これを世界中のVISA加盟店で使えるようにし、小売事業と連動するショッピングクレジットの取扱いを拡大することで、キャッシングの落ち込み分をカバーしたのである。

 ただ、金利引き下げによる利益消失、旧金利分の償還により、14年までの9年間は1500億円程度の損失を計上するなど、ダメージは少なくなかった。
 それでも、ショッピングクレジットは取扱額を着実に伸ばし、キャッシング事業も底を打つなど、クレジットカード事業の改革はマルイの新たな価値を創造した。

(つづく)
【釼 英雄】

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