2024年11月25日( 月 )

マルイとはこんな店だ!~その全貌と戦略を探る(5)

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博多マルイ オープン直前企画

 4月21日に開業する「博多マルイ」のテナント概要が発表された。商業施設は進出の度にテナントの顔ぶれで「九州初上陸」「福岡初進出」という冠に注目が集まる。しかし、企業そのものが新参のマルイは戦略、戦術ともこれまでの施設とはだいぶ異なる。その全貌とポイントを見ながら、福岡への影響度を探る。

独自性は流通戦争にも動じないか、従来にないフロア構成とテナント誘致

KITTE博多の核店舗をとして出店する博多マルイ<

KITTE博多の核店舗をとして出店する博多マルイ

 福岡では過去、大型商業施設が開業する度に、メディアは「第◯次、流通戦争」と定義付けて報道してきた。ところが、2011年のJR博多シティの開業からは、天神と博多駅の競合、都市部と郊外の競争といった単純な図式では語れなくなっている。
 例えば、博多阪急は開業から4年、ずっと増収増益を続けている。かといって、天神や郊外がその分のパイを奪われ、売上を激減させたかと言うと、そんなことはない。

 確かに国内外の高級ブランドやデザイナーズファッションは天神に集まる傾向強いが、そうしたハンディを持ちながらも博多駅は独自でマーケットを広げている。インバウンド消費などを追い風にしつつ、天神との相乗効果を発揮して集客しているのだ。
 マルイはこうした福岡がもつポテンシャル、市場拡張力を背景に満を持して登場する。
現時点で集客目標や売上げ規模は公表していないが、既存店の同規模の100億円くらいは売上げることができると踏んでいるのではないか。

 テナントは135区画中、50区画以上が「九州初出店」。しかし、その言葉こそ客にとっては、すでに陳腐化している。
 新たにオープンする店名やブランドは違っても、中身や商品のテイストがほとんど似通っていることを認識しているからだ。それほど、市場は成熟しているのである。
 あごだしの「だし処 兵四郎」や文具店の「スティロプリュス」といった地元発信のテナントが誘致されたのも、こうした理由からだろう。企画会議で客の要望が生きた形で、マルイとしても客が期待するテナント集積に奔走したようである。
 こうした点は、これまでの商業施設とは違う点だ。それをどこまで売上に結びつけられるか。クレジットカードを含めマルイの営業戦略が問われるところである。

博多駅が大ボリューム化する功罪

 店舗面積(1万5,000m2)やテナントの顔ぶれ、商品政策のどれをとっても、マルイが既存の商業施設と真っ向勝負しようという感じは見えない。それはある意味、弱腰や無欲と捉えられなくもないが、むしろ独自性を貫く姿勢としては評価できる。
 最激戦区の東京でしのぎを削った経験は伊達ではないし、クレジットカードのノウハウでは一日の長があるだけに、既存店には脅威に映るはずだ。

 では、マルイが及ぼす影響は何だろうか。考えられるは博多駅市場の大ボリューム化。いわゆる商品のグレードや価格帯で、一番販売量が多いゾーンになっていく懸念である。
 博多駅は1日平均の乗降客数(2014年)が約20万人。そこで生まれる小売り市場は、通勤通学客による日常の買い物、旅行客による御土産や飲食が主体となる。

 アミュプラザ博多や博多阪急のアパレルは、少子高齢やECの影響を最も受けやすいと思われるし、東急ハンズは雑貨主体で収益拡大には限界がある。あとは飲食やデパ地下くらいだ。インバウンド消費といっても、先行きは不透明で過度な期待はできない。
 こうした状況下に博多マルイが加わると、博多駅市場ではなおさら飲食、食品とデイリーユースの衣料・雑貨などがより際立って売れていくと思われる。
 高感度なファッションや希少なブランドは、販売も購買も博多駅以外に求められる傾向が強くなるからだ。こうした予兆は博多阪急が開業する時にも関係者から聞かれ、地元専門店の中にも博多駅の大ボリューム化を見越し、天神に店舗を移したところもあるほどだ。

 大ボリューム化は確実に売上が上がるわけだから、決してデメリットではない。しかし、博多駅以外への売上げの持ち出しを意識し、それを差し止めるために各店の商品政策にブレが生じると、かつての博多井筒屋のように戦略を見失ってしまう。
 どちらにしても、博多駅という立地でマルイという存在を各店がいかに相乗効果に結びつけられるか。共創による市場拡大、需要喚起が一番のテーマになるのは間違いない。

(了)
【釼 英雄】

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