2024年11月27日( 水 )

柳川商店街再生の試み(10)

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hyou さあ、柳川商店街シリーズもいよいよ最終段階に差し掛かっています。
 これまで長きにわたって柳川商店街の現状分析→消費者ニーズの把握→課題の抽出と解説を行ってきました。いよいよ、今後柳川商店街がどうあるべきかを提案する段に差し掛かりました。

 もともと、このプロジェクトの課題は、柳川商店街のど真ん中に発生した大型店(SM)の跡地をどう活用すべきかという点にありました。そこで、これまでの分析結果をもとに柳川商店街、特に、マルショク跡地活用に関するSWOT分析を行ってみました。

 SWOT分析とは、マーケティング分析の一手法です。一般的製品やサービスのマーケティング戦略を検討するとき、自社の事業分野にどのような競争要因や環境要因があるかを認識し、これに対して自社の強みや弱みを当てはめれば、それぞれの側面でとるべき戦略の方向性がみえてくるというものです。外部環境としての機会(Opportunity)・脅威(Threat)と内部環境としての強み(Strength)・弱み(Weakness)の関係から戦略の方向性を明らかにしようとするものです。柳川商店街にもあてはまる分析手法といえましょう。以下、その分析結果を記します。

(1)積極攻勢

 柳川商店街は、市の中心部に位置し、高校生、専門学校生も多い。この層は売上拡大には直結しない面があるが、「場」の活性化には寄与します。このメリットを生かすには、高校生や若者に音楽やダンスなどの発表の場(「ステージ」)を提供し、これらの層を取り込み、当該地を華やいだ場とすることが考えられます。積極攻勢の第1弾です。
 また、子育て女性が自分たちの交流の場、情報交換の場、憩いの場を求めているというニーズに応えるには、おしゃれで落ち着いた雰囲気、カジュアルな雰囲気の「カフェ」(「カフェ・喫茶・飲食」のニーズは消費者アンケートで36.5%)を導入し、各層の安らぎの場とすることが考えられます。積極攻勢の第2弾となります。

(2)段階的施策

 柳川商店街の弱みである業種構成の不足、アンバランスを段階的に解消することが重要です。
 アンケート結果に見られるように消費者の47.5%は当該地に「生鮮食料品店」を望んでいました。商店街会員への調査でも、35.1%が「生鮮食料品店」を必要としています。業態をどうするかは検討の余地はあるとしてもこの要素は、柳川商店街を活性化させる段階的施策の最重要項目と位置づけることができるようです。

 「生鮮食料品店」の出店によって、これまで離れていった層を取り戻し、買物弱者化している地域の高齢者への貢献にもなるわけです。「生鮮食料品店」という物販機能に関連して商店街会員の自慢の商品、売れ筋商品の常設販売機能も必要です。消費者は生鮮食料品を買い求めれば、これに関連した食料品、日用品の購入を行うのは当然です。このニーズに応えるために「商店街会員ショップ」といったものも必要となります。
 また、若い層が興味をひく店舗が柳川商店街に少ないという点をカバーするには、「クラフトショップ」を導入し、これをチャレンジショップとして地域の若手クリエーターなどへ貸し出すということも商店街の社会貢献という面からも必要ではないでしょうか。

(3)差別化戦略

 主として大型ショッピングセンター、大型量販店、ロードサイドショップなどとの差別化を図り、柳川商店街の独自性を発揮し、消費者から強い支持を得るための戦略と考えられます。
 大型店などの競合店が形成しにくい店舗と顧客とのコミュニティや顧客(消費者)同士のコミュニティを形成しその拠点となることによって頻繁に来場してもらえることとなります。そのような機能は、前述の「カフェ」にも期待できますが、ここはより積極的な差別化戦略のツールとして「多世代交流拠点 (多世代の層が集まって趣味、娯楽、講習、勉強会を行う) 」「子供図書館」といったものを導入する必要がありそうです。

(4)専守防衛・撤退戦略

 現在、マルショク跡地を積極活用する計画を立案していることもあって、この戦略については触れません。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学観光学部特別研究員(客員フェロー)、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師。

 
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