韓国経済ウォッチ~危険度ナンバー1は、やはり家計負債?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
もう1つは、韓国の自営業者の負債である。参考までに述べておくと、韓国の自営業者の比率は、他の国に比べて非常に高い。というのは韓国では会社を辞めると、日本のように嘱託社員として働くとか、今までの経験を活かす場がとても限られている。そのため、韓国ではリタイア後の収益が急激に減少する特徴が統計にも表れているし、他に選択肢がなくて自営業を始めるケースが多い。
ところが、個人でお金を借りると家計負債になるが、自営業者がお金を借りると、事業資金扱いになり、それも家計負債には含まれず、企業負債になっていることも多い。自分がこれまでやって来た経験を活かしてやる事業ならいいが、まったく違う分野に入って事業をしながら習得していく方法では、なかなか成功は難しい。会社の退職金などでスタートした事業がうまく行かず、廃業しようにも周囲の目があるから、借金しながら頑張っているケースが多い。
その結果、事業に失敗し、中産階層から下流階層に転落することになる。とくに自営業は競争が激しく、今の時代のようにモバイル時代になってくると、自営業が成功する確立は低くなる。
その自営業の現実が、家計負債にはそのまま反映されていないという指摘である。それから韓国では住宅を買うときに、日本のようにローンを組むことによって金融機関の審査を通るのではなく、契約金だけを用意できれば、まず住宅購入ができるようになっているため、これが後で負債として負担になるケースも多い。現代は、昔のように一斉に不動産が上がるような時代ではなくなったので、値上がりを見込んで無理して購入した住宅が値下がりし、融資残額にも満たないことでハウスプアになったりしている。
とくに現在の朴謹恵大統領時代になって、不動産を活性化させて、内需活性化の呼び水にしようという狙いで金利を下げ、不動産の規制を緩和したところ、政府の予想を上回る急激な不動産過熱が発生し、その期間中に家計負債は急増してしまった。政府では「お金を借りてでも住宅を買いなさい」と奨励した覚えはないと否定しているが、いずれにせよ、家計負債が膨大に膨らんだことは紛れもない事実である。韓国の家計負債は、2015年末に1,200兆ウォンに達していて、負債の規模もさることながら、増加スピードが速いことで懸念されている。韓国の家計負債は04年に494兆ウォンであったが、15年には1,200兆ウォンに膨らんでおり、年平均8%ほどで増加をしたという計算になる。同じ期間中に、韓国の経済の実質成長率が3.6%前後であったことを考えると、経済成長に比べて負債は2倍以上のペースで増加したことがわかる。韓国の家計負債は、なぜ懸念されているのか――。
国際決済銀行などの基準では、GDPに占める負債比率は80%を超えると、危険とされている。韓国は87%で、この基準からすると、すでに危険領域に入っていることになる。
それから借金を返す能力を表す指標として、可処分所得に対する家計負債の比率というものがある。これもOECD加盟国の平均は、133.5%であるのに対して、韓国は164.2%になっている。
借金というのは、金額の過多ではなく、返す能力がもっと大事である。韓国経済は今後、これまでのような成長は難しく、低成長時代に突入すると予想されている。また、家計負債を背負っている債務者の3分1は高齢者になりつつある点が懸念されている。高齢になれば収入が急激に減って、返済能力は落ちる。そのような状況なので返済が懸念されている。
それから家計負債の3分の1の債務者は多重債務者であるので、これも問題だとの指摘がある。高麗大学の金東元博士は、3つ以上の金融機関からお金を借りている多重債務者は329万人で、金額ベースでは323兆ウォンになると主張している。以上のような理由で、韓国経済が悪化した際に最も危険度が高いのは家計負債だと、専門家は口をそろえている。
(了)
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