「地域包括ケアシステム」は本格的に稼働できるの?(後)
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大さんのシニアリポート第41回
そこで3日目、埼玉県北部に位置する加須市のシンポジウムに参加した。「在宅医療・介護シンポジウム」。主催加須市。基調講演と司会がフリーアナウンサーの生島ヒロシ氏ということもあり、300人収容のホールは満杯。整理券を入手できなかった市民は、特設のテレビに群がった。聞きたかったのは第2部。パネリストに福祉課長、医療連携室長、地域包括支援センター長に、医師会長、歯科医師会長、薬剤師会長が加わった。テーマは「加須市の在宅医療・介護連携の現状と課題」。具体的に現状を市民に説明し、問題点を指摘するというもの。3回目ということで、来場した市民の表情も落ち着いている。
加須市の場合、医師、歯科医師、介護職員が「在宅医療・介護推進委員会」を立ち上げ、常に連携を取り合っている。加えて、当日のように、市民に対してシンポジウムを開き、実情を報告するという、常に市民の目線を意識しつつ体制を組んでいる。在宅医療専門医師はチームを作り、時間の都合のつく医師が往診する。薬剤師は訪問して正しい薬の飲み方を指導。地域包括支援センターは、高齢者の様々な問題に対応する「何でも屋」的存在である。加須市ではさらに、「高齢者相談センター」を別に設け、保健師、主任ケアマネージャー、社会福祉士が常駐して、個々の問題に対処する。加須市は埼玉県の訪問介護のモデル地区に指定されている。行政と医師・歯科医師・薬剤師との関係が見えるのだから、モデル地区に指定されるのも納得できる。人口が本市の約3分の1の11万4,000人で、比較的コンパクトにまとめることができるからなのだろうか。いや、本市との温度差がありすぎるのは、熱いハートを持った行政マンと医療関係者がたくさんいるからだ。本市のように行政と医師会との意思の疎通が円滑にいかないのは、加須市のような熱い思いが両者に欠けているからだろう。不利益を被るのは、市民であることを忘れないで欲しい。
認知症を公表した香川涼子さんが施設に入所して2カ月、「サロン幸福亭ぐるり」の人気企画は相も変わらずカラオケ。「今日はなぜカラオケをやらないのか」と‘カラオケ命派’の人。「毎日カラオケでは(不定期なのだが)、中に入れない」という‘カラオケ嫌派’の人とかまびすしい。昨年ふたりの転居(ひとり施設入所)と4人の物故者があり、常連客の人数に翳りが出てきたものの、新しい常連客が増えるという現象に正直驚いている。前述のカラオケの問題を解決すべく「ぐるり」のコンセプトを一部手直しした。‘カラオケの日’を決めた(3月までの暫定)のだ。
「何もない、でも何かある」のが「ぐるり」のキャッチコピーなのだが、どうもそうはいかなくなった。それだけ注目を集めはじめたのだと思うことにしている。しかし、来亭者の何人が「地域ケアシステム」に関心を持ち、自分の行く末を見つめているのだろう。“その日”が確実に来るのを先延ばししているようにカラオケに興じる。まあ、これでいいのかもしれないけど。(つづく)
<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。関連記事
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