ドナルド・トランプ候補はなぜ「強い」のか(1)
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副島国家戦略研究所(SNSI)研究員 中田 安彦
米大統領選挙の候補者選びで、不動産王のドナルド・トランプ候補の躍進が止まらない。すでに2月23日現在、3州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州)で党員集会・予備選挙が実施されたが、このうちアイオワ州党員集会で2位になったものの、他の2州ではトップ得票を果たした。3月1日には12州で一斉に党員集会・予備選挙が行われる「スーパー・チューズデー」を迎える。世論調査を見る限りでは、選挙戦が進み何度もの討論会を経てもなお、支持率は常に3割前後をキープしている。他の候補者が2割から1割であるのと比較すると、驚くべきことと言えよう。
筆者は、昨年秋から年末にかけて米国に短期留学で滞在し、アメリカの政治状況を直に見る機会に恵まれた。米国のニュース番組は、CNNも保守系のFOXニュースもトランプ候補の動静を報じない日はほぼなかった。筆者が滞在した首都ワシントンDCはリベラルな気風があり、大学内では民主党では民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース上院議員や、共和党の若い星のマルコ・ルビオ候補を支持する学生が多かった。
実際のところ、私は生でトランプ支持者に会ったことがない。周りの人間は、「トランプというのはリアリティテレビショーのホストだ、政治の世界までコメディになってしまった」と呆れる人ばかりだった。しかし、報道を見る限りでは、アメリカの内陸部や南部では少なからずトランプを支持する人がいるのが事実だ。しかし、ドナルド・トランプと言えば、ニューヨーク生まれの大富豪であり、庶民にはとても高くて手が出ないホテルやゴルフ場、カジノリゾートを経営する人物だ。そして一方で、トランプの支持者と言われる人は、世論調査によれば、総じて「郊外在住でブル−カラーの白人労働者」と言われる人たちである。一見すると、華やかなセレブリティであるトランプを、田舎の低所得層の有権者は毛嫌いするイメージがある。
しかし、事実は逆なのである。そのような大金持ちが、なぜアメリカの草の根の大衆の支持を得ているのか――。このことを説明すると、「なぜトランプは強いのか」ということがわかるのである。そもそもドナルド・トランプが、まったく政治家としての経験もないのに、なぜこれだけの熱烈な支持を得ているかという点である。
実は、彼が政治の世界のアウトサイダーで、紆余曲折はあるものの、現在も米国の複数の大都市に巨大な高級ホテルを建設しているデベロッパーとしての実績や、全国テレビでのバラエティ番組での成功、そしてさまざまな自己啓発本を通じて知られていることが、彼の支持の原動力だ。(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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